第5講 性格不一致で離婚できるのか|法的な離婚原因との距離をどう考えるか
第5講
性格不一致で離婚できるのか|法的な離婚原因との距離をどう考えるか

離婚相談でもっとも多く聞かれる理由の一つが、「性格が合わない」「価値観が違う」というものです。現実の夫婦関係では、こうした違和感や不一致が長年積み重なり、別居や離婚に至ることは珍しくありません。しかし、法律上は、「性格不一致」という言葉そのものがそのまま離婚原因になるわけではありません。ここに、一般の感覚と法的判断とのずれがあります。
まず押さえるべきなのは、協議離婚であれば、夫婦が合意しさえすれば理由は問いません。したがって、「もう性格が合わないから別れたい」という理由で双方が納得しているのであれば、協議離婚は可能です。問題になるのは、相手が離婚を拒んでいる場合です。この場合、最終的には裁判で離婚が認められる事情があるかが問われます。
裁判での離婚は、民法上の離婚原因が必要です。性格不一致それ自体は明文の離婚原因ではありません。もっとも、夫婦関係は一つの出来事だけで壊れるとは限らず、会話の断絶、信頼関係の喪失、生活習慣の著しい齟齬、価値観の根本的対立、長期間の別居などが重なれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると評価されることがあります。実務上、性格不一致という言葉は、その背景にある関係破綻の実質を要約した表現として用いられることが少なくありません。
したがって、法的に重要なのは、「性格不一致」という抽象語ではなく、その結果として婚姻関係がどこまで壊れているかです。たとえば、長期間にわたって会話がない、生活を完全に別にしている、家庭内で協力関係が失われている、別居が継続している、修復のための働きかけが実質的に尽きている、といった事情は、破綻の裏付けとして意味を持ちます。
他方で、単に「意見が合わない」「けんかが多い」という程度では、直ちに裁判離婚が認められるとは限りません。夫婦には一定の意見対立や摩擦があるのが通常であり、それだけで法的に婚姻継続不能とまではいえないことも多いからです。
この点で大切なのは、感覚的な「もう無理」を、法的に意味のある事実に置き換えて整理することです。何がいつから続いているのか、別居はあるのか、生活の実態はどうなっているのか、修復の可能性はどこまであるのかを具体的に見ていく必要があります。
性格不一致は、離婚のきっかけとしては非常に現実的です。しかし、法的には、それをそのまま言うだけでは足りません。夫婦関係の破綻がどのような形で現れているのかを、事実として積み上げていくことが重要になります。