第14講 DVとは何か|暴力がある夫婦関係で何を優先すべきか
第14講
DVとは何か|暴力がある夫婦関係で何を優先すべきか

DVという言葉は広く知られるようになりましたが、実際の相談現場では、被害を受けている本人が「これがDVに当たるのか分からない」と感じていることも少なくありません。DVは、単に殴る、蹴るといった身体的暴力だけを指すものではなく、脅迫、怒号、行動監視、経済的支配、性的強要など、相手を支配し萎縮させる一連の行為を含みます。夫婦間であるからといって許されるものではなく、深刻な人権侵害として捉える必要があります。
DV事案で最も大切なのは、離婚をどう進めるかよりも先に、安全確保をどうするかです。被害の程度によっては、自宅にとどまりながら証拠を集めてから考える、という段階を飛ばして、まず避難先を確保し、警察や配偶者暴力相談支援センターに相談し、必要に応じて一時保護を利用することが優先されます。相手に離婚の意思を伝えること自体が危険を高める場合もあるため、法的対応は安全の見通しが立ってから進めるべきです。
そのうえで、後の手続に備えて、診断書、傷の写真、録音、LINEやメール、日記やメモ、第三者への相談履歴などを残しておくことが重要になります。DVは家庭内で起きるため目撃者が少なく、「言った言わない」になりやすいからです。また、経済的支配が強い事案では、通帳、キャッシュカード、保険証、身分証、子どもの資料などをどう確保するかも現実的な問題になります。
DV事案では、一般的な離婚相談と異なり、「まず話し合いましょう」という発想が危険になることがあります。相手との交渉の場が、そのまま支配や威圧の再現になることもあるからです。したがって、本人同士での直接交渉を避け、弁護士や公的機関を介した対応に切り替えることが有効な場面が多くあります。
DVを理由とする離婚は、単に夫婦がうまくいかなかったという話ではなく、身体と心の安全、子どもの安全、生活再建を含む問題です。離婚条件の良し悪しを考える前に、まず無事に離れることができるかを軸に置かなければなりません。