第15講 モラハラで離婚できるのか|精神的支配と立証の難しさ
第15講
モラハラで離婚できるのか|精神的支配と立証の難しさ

夫婦の一方が、継続的に人格を否定する、威圧的に振る舞う、無視を続ける、過度に行動を制限する、経済的に追い込むといった行為を繰り返す場合、いわゆるモラルハラスメント、いわゆるモラハラが問題になります。殴る蹴るのような明白な身体的暴力がないため軽く見られがちですが、実際には、被害を受ける側の自己評価を著しく損ない、正常な判断力を奪い、婚姻共同生活を深く破壊することがあります。
法的には、「モラハラ」という言葉自体が条文に書かれているわけではありません。問題となるのは、その具体的言動が、婚姻を継続し難い重大な事由に当たるか、あるいは不法行為として慰謝料請求の対象になり得るかという点です。したがって、単に「つらかった」「ひどい人だった」という抽象的主張だけでは足りず、どのような言動が、どの程度の頻度で、どのような文脈で行われたのかを具体化することが大切です。
モラハラ事案の難しさは、何よりも立証にあります。身体的暴力であれば傷や診断書が残りますが、精神的支配は目に見えにくく、外部からは「夫婦喧嘩の延長」と受け取られる危険があります。そのため、録音、LINE、メール、日記、家計管理の記録、第三者への相談履歴、子どもの面前での言動に関する資料などを丁寧に蓄積する必要があります。継続性と具体性が見える資料ほど有効です。
また、モラハラの相談では、被害を受けている本人が「自分にも悪いところがあったのではないか」と自責に傾きやすい傾向があります。しかし、夫婦関係に意見の対立があることと、一方が他方を持続的に支配・萎縮させることとは別問題です。裁判でも、単なる性格不一致との違いがどこにあるのかが問われるため、威圧、支配、孤立化、人格否定といった構造を意識して整理することが重要です。
モラハラで離婚が認められるかどうかは、事案ごとの差が大きい分野です。ただし、証拠が乏しいからといって直ちに諦める必要はありません。継続的な言動を具体的に積み上げることで、婚姻継続が困難である実態を示せる場合は十分にあります。感情論としてではなく、事実の連なりとして示すことが鍵になります。