第40講  隠し財産が疑われるときはどうするか|資料収集と追跡の発想

第40講
隠し財産が疑われるときはどうするか|資料収集と追跡の発想

離婚紛争では、一方が財産を隠しているのではないかという疑いが生じることがあります。預金が急に減っている、不自然な出金がある、証券口座の存在を言わない、会社に資産を移しているように見えるなど、さまざまな形で問題になります。もっとも、疑いだけで結論を出すことはできず、実務では資料に基づいて丁寧に追っていく必要があります。

まず重要なのは、手元にある資料を徹底的に確認することです。通帳の入出金履歴、給与明細、源泉徴収票、確定申告書、保険証券、証券会社からの郵送物、不動産の固定資産税通知、クレジットカード利用明細などから、財産の手掛かりを拾います。離婚を切り出す前や別居直後の時点では、まだ資料にアクセスしやすいこともあるため、初動が非常に大切です。

次に、見えている財産だけでなく、「本来あるはずの財産」を考える視点が必要です。長年の収入に比べて預金が不自然に少ない、退職金があるはずなのに説明がない、投資経験があるのに証券口座資料が出てこない、こうした不一致は追跡の出発点になります。隠し財産は、突然見つかるというより、数字のつじつまの合わなさから浮かび上がることが多いのです。

法的手段としては、家庭裁判所の手続の中で資料提出を促したり、必要に応じて調査嘱託や弁護士会照会などを検討したりする場面もあります。ただし、万能ではなく、何を対象に、どの資料を、どの順番で求めるかを考えなければ、有効な収集にはつながりません。単に「全部出せ」と言うだけでは、実務上うまくいかないことも多いです。

隠し財産の問題では、感情的に「きっと隠している」と思い込むだけでは足りません。大切なのは、資料を集め、比較し、不自然な点を見つけ、仮説を立てて追うことです。財産分与の公正を確保するためには、疑いを証拠に変えていく作業が不可欠です。

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