第39講 自営業者・会社経営者の離婚で何が難しいのか|売上と個人財産が混ざる場合
第39講
自営業者・会社経営者の離婚で何が難しいのか|売上と個人財産が混ざる場合

自営業者や会社経営者の離婚では、給与所得者の離婚に比べて、収入や財産の把握が格段に難しくなることがあります。その理由は、売上、経費、会社財産、個人資産、役員報酬、事業用口座などが複雑に入り組み、見た目ほど実態が単純でないからです。離婚実務では、この「混ざり」をどうほどいていくかが大きな課題になります。
まず、養育費や婚姻費用の基礎となる収入認定が難しくなります。確定申告書上の所得額がそのまま生活実態を反映しているとは限らず、経費算入の範囲、役員貸付金、法人負担の私的支出などを見なければ、本当の経済力を判断できないことがあります。売上が大きくても自由に使えるお金が少ない場合もあれば、逆に申告所得は低く見えても実際の生活水準が高い場合もあります。
財産分与でも、個人名義財産と事業財産の区別が問題になります。法人名義の預金や不動産は直ちに個人の財産分与対象になるわけではありませんが、会社に利益を内部留保している、役員報酬を調整している、個人費用を法人経費で処理しているといった事情があると、実質面の検討が必要になります。また、自営業では事業用預金と生活費口座が混在していることも多く、何が共有財産かを整理するだけでも相当の手間がかかります。
そのため、資料収集が決定的に重要です。確定申告書、決算書、総勘定元帳、法人税申告書、通帳、クレジット明細、保険契約、証券口座資料などを幅広く確認し、数字の流れを追う必要があります。相手が情報を握っている場合には、開示のさせ方自体が争点になります。
自営業者・経営者の離婚では、表面上の収入や名義だけでは実態が見えません。売上と個人財産が混ざる構造を前提に、資料から実態を掘り起こす姿勢が必要です。一般的な算定表や通帳残高だけでは処理しきれない、離婚実務の中でも難度の高い分野といえます。