第4回 法人財産の見つけ方|売掛金・在庫・機械設備・保険・未収金

法人財産の見つけ方|売掛金・在庫・機械設備・保険・未収金

法人破産管財で財産を見つける作業は、「何が売れそうか」を眺めることではありません。出発点は破産法34条で、開始時に会社が有している財産は原則として破産財団に入り、さらに開始前の原因に基づく将来請求権も財団に属します。したがって、現金、預金、在庫のような目に見える財産だけでなく、まだ回収されていない売掛金や、後で金銭化される権利まで視野に入れなければなりません。

しかも、この探索は後回しにできません。破産法上、破産管財人とは破産財団に属する財産の管理・処分権を持つ者であり、開始決定があるとその管理処分権は管財人に専属し、管財人は就職後直ちに財団管理に着手すべきものとされています。つまり、法人財産の把握は、換価段階の前座ではなく、開始決定直後の中核業務です。

まず売掛金です。東京地裁の法人用「打合せ補充メモ」は、受任通知の発送先として「債務者(売掛先など)」を明記し、さらに「預かり金・回収金精算書」を作成する前提を置いています。これは、法人案件では売掛金や回収金が最初から重要な財団候補として想定されていることを示しています。したがって、請求書控え、得意先一覧、入金予定表、通帳の入金履歴、係属訴訟の有無を突き合わせながら、「まだ入っていない金」を拾い上げるのが基本になります。

次に、在庫や機械設備のような有体物です。東京地裁書式は、「在庫商品・原材料その他の動産」について、換価可能かどうか、所在、種類・数量を記載させています。また別に、会社事務所、営業所、倉庫、工場などの不動産処理欄も設けています。書式上、「機械設備」という語がそのまま前面には出ていなくても、少なくとも工場・倉庫・営業所にある「その他の動産」として拾うのが自然であり、実務上も、在庫と同じく所在地・数量・稼働状況・搬出可能性まで押さえて初めて換価の見通しが立ちます。ここは明文というより、書式の立て付けから導かれる実務的な読みです。

保険やその他の未収金も見落としやすいところです。法人用メモは、引継予納金の原資候補として「解約返戻金」を明示し、預かり物品として「保険証券」「倒産防止共済等の証書」を列挙しています。これに34条2項の「開始前の原因に基づく将来請求権」が重なると、少なくとも保険の解約返戻金や、開始前の取引関係から生じる返還請求権・未収金は、紙の通帳に映っていなくても財団候補として洗うべきことになります。財産探索では、「今あるもの」だけでなく、「資料を見れば請求できるもの」を掘り起こす視点が要ります。

さらに、財産は単独の物品名で見つかるとは限りません。東京地裁書式は、通帳、保険証券、有価証券、賃貸借契約書、リース契約書、小切手帳、帳簿類、決算書類、税務申告書控え、訴訟関係書類まで持参・確認対象にしています。これは、法人財産の探索が、物を探す仕事であると同時に、権利の痕跡を探す仕事でもあることを示しています。売掛金は契約書や請求書から、敷金返還やリース精算は契約書から、保険返戻金は保険証券から、係争中の請求権は訴訟記録から見えてくるのであって、帳簿やデータを見ずに財産だけを拾う発想では足りません。

結局、法人財産の見つけ方は、五つの箱に分けると整理しやすいです。すなわち、①すでに存在が見えている金銭・預金、②まだ入ってきていない売掛金その他の未収金、③在庫・機械設備・車両などの動産、④保険・共済・契約に基づく返還請求権、⑤それらの所在と権利内容を示す帳簿・契約書・データです。破産法34条が「財団に何を入れるか」を決め、78条・79条が「それを誰が、いつから握るか」を決め、東京地裁書式が「実務上どこを見に行くか」を具体化している。法人破産管財における財産探索とは、この三つを接続する作業だといえます。

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