第7回 売掛金・在庫・機械設備|法人財産の把握と換価の基本
売掛金・在庫・機械設備|法人財産の把握と換価の基本

法人破産管財でまず押さえるべきなのは、換価の出発点が「売れそうな物を探すこと」ではない、という点です。破産法34条は、開始時に会社が有する財産を原則として破産財団に組み入れ、開始前の原因に基づく将来請求権も財団に含めます。さらに78条・79条により、開始決定後の財団の管理処分権は破産管財人に専属し、管財人は就職後直ちに財団管理に着手すべきものとされています。したがって、売掛金・在庫・機械設備の把握は、換価の前段ではなく、開始決定直後の中核業務です。
売掛金については、帳簿上の残高を見るだけでは足りません。東京地裁のQ&Aは、破産手続を、破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続として説明しており、同地裁の法人用「打合せ補充メモ」でも、別紙として「預かり金・回収金精算書」を添付する前提が置かれています。つまり、売掛金は単なる数字ではなく、回収可能性、回収経過、実際に入金した金額まで追って初めて財団価値になる資産として扱うべきものです。請求書、契約書、通帳の入金履歴、売掛先一覧を突き合わせて、「あるはずの債権」と「実際に回収できる債権」を分けて見る必要があります。
在庫は、見つけやすい反面、評価を誤りやすい資産です。東京地裁の法人用メモは、「在庫商品・原材料その他の動産」について、換価可能か換価不能か、所在、種類及び数量を記載する形式を採っています。ここから分かるのは、管財実務で重要なのが「在庫があるか」だけではなく、どこにあり、何がどれだけあり、換価対象として意味があるかを分けて整理することだという点です。財団把握の段階で所在と数量が曖昧だと、保全もできず、見積りも取れず、換価手続に移れません。
機械設備も基本は同じですが、在庫以上に「あること」と「換価できること」が一致しません。東京地裁の法人用メモは、会社事務所、営業所、倉庫、工場などの不動産の処理欄を設けたうえで、そこにある動産の所在確認を前提にしています。したがって、機械設備については、単に設備一覧を作るだけでなく、どの場所にあり、誰の占有下にあり、搬出や売却が現実に可能かまで見て初めて換価の対象になります。これは条文に機械設備という語が直接出てくるからではなく、34条の財団範囲と、裁判所書式が求める所在確認・物品確認の構造から導かれる実務的帰結です。
結局、売掛金・在庫・機械設備の処理は、①財産として拾う、②所在・数量・権利関係を固める、③換価可能性を見極める、という三段階で進めるのが基本です。東京地裁が法人事件で「預かり金・回収金精算書」や「在庫商品・原材料その他の動産」の記載を求めているのも、財団把握と換価が一続きの仕事だからです。裁判所に受ける管財は、財産の数を並べる管財ではなく、どの資産を、どの資料に基づいて把握し、どの順で換価に乗せたかが見える管財です。