第22講 契約の整理とは何か|継続的契約をどう残し、どう切るか

第22講 契約の整理とは何か|継続的契約をどう残し、どう切るか

法人破産における契約整理とは、契約書の束を眺めて「終了」「継続」とラベルを貼る作業ではない。実務上は、各契約について、いま何が未履行なのか、相手方の給付は継続的か一回的か、契約を維持することで財団価値が生まれるのか、それとも費用だけが膨らむのか、という点を見極める作業である。売買基本契約、業務委託契約、保守契約、ライセンス契約、システム利用契約、配送契約、フランチャイズ契約、業務提携契約などは、形式上は「契約がある」という一点で共通していても、破産手続との関係では意味合いが大きく異なる。破産法53条は、双方未履行の双務契約について、管財人に解除又は履行選択の権限を認めているが、現場ではその前提として「そもそもこの契約は何を継続させる契約なのか」を読み解く必要がある。

継続的契約の整理で重要なのは、財団に利益をもたらす契約と、事業停止後には負担しか残さない契約とを早期に区別することである。たとえば、サーバー保守、会計システム、警備、通信、倉庫、物流、ライセンス利用などは、短期間でも維持しなければ資料保全や換価作業に支障が出ることがある。他方で、営業継続を前提とした広告、販促、定期仕入れ、長期外注などは、破産後も漫然と残せば費用の発生源になる。破産法55条は、継続的給付契約について、申立て前に生じた破産債権の不払いを理由に、相手方が開始後の給付を拒めないことなどを定めているが、同条3項は労働契約を除外している。つまり、継続契約には一定の保護構造がある一方、何でも自動的に維持されるわけではなく、契約類型ごとの検討が必要である。

また、契約整理では、解除条項や倒産時終了条項の有無だけを見れば足りるわけでもない。現実には、契約書上は終了できても、システム停止によりデータが失われる、サポート打切りで引継ぎ不能になる、第三者ライセンスが絡んで譲渡困難であるなど、契約終了の実務コストが大きいことがある。逆に、形式上は継続していても、相手方に履行意思や履行能力が乏しく、財団として維持する意味が薄いこともある。したがって、契約整理とは、契約の法的構造、現場の依存関係、終了コスト、短期的必要性を総合して判断する作業である。法人破産の現場では、「契約をどう切るか」以上に、「何を、どこまで、何のために残すか」を見誤らないことが重要になる。

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