第23講 双務契約の扱い|履行か解除かをどう判断するか

第23講 双務契約の扱い|履行か解除かをどう判断するか

双務契約の扱いは、法人破産における契約処理の中心論点である。破産法53条1項は、破産手続開始時に、破産者と相手方双方がまだ完全に履行を終えていない双務契約について、破産管財人は契約を解除するか、破産者の債務を履行して相手方の履行を請求するかを選択できると定めている。また、相手方は相当の期間を定めて催告でき、管財人がその期間内に確答しないときは解除したものとみなされる。つまり、管財人の判断は無期限に留保できるものではなく、相手方からの圧力がかかる構造になっている。

もっとも、実務上の難しさは、条文を知っていることではなく、どの契約で履行選択をする意味があるのかを見極める点にある。履行を選択する以上、管財人は破産者側の給付を現実に行う必要があり、そのための費用、人員、資料、第三者協力が確保できなければならない。他方で、履行を選択すれば、相手方からの反対給付を受けることができ、それが財団価値を増やすこともある。たとえば、完成直前の受注案件、引渡し目前の成果物、追加的費用をわずかに投じれば回収額が大きい案件などでは、解除より履行の方が合理的な場合がある。逆に、履行のために多額の外注費や人件費が必要で、しかも完成・回収の見通しが不安定であれば、解除の方が財団保全に資する。履行か解除かは、法技術ではなく採算判断でもある。

解除が選ばれた場合、破産法54条1項により、相手方は損害賠償請求権を破産債権として行使することになる。また、同条2項は、破産者が受けた反対給付がなお財団中に現存するときはその返還を請求でき、現存しないときはその価額について財団債権者として権利行使できる場面を定めている。したがって、解除は単に「契約を切る」だけではなく、相手方の地位をどう位置づけるか、受領済み給付をどう扱うかという後続処理まで含む。双務契約の処理を誤ると、財団債権なのか破産債権なのか、返還なのか損害賠償なのかが混線しやすい。

なお、継続的給付契約については55条の特則があり、さらに労働契約については同条3項で除外され、民法631条が、使用者について破産手続開始決定があった場合、期間の定めのある雇用であっても労働者又は破産管財人が解約申入れでき、損害賠償請求はできないと定めている。したがって、「双務契約だから全部53条で処理する」という理解は正確ではなく、契約類型によって特則や民法側の処理が交錯する。第23講では、双務契約を一つの万能箱として語るのではなく、「履行選択の余地がある一般形」と「継続的給付・雇用など特則を伴うもの」とを分けて説明するのが実務に即している。

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