第4講  就業規則はなぜ必要か|会社を守るルールブックの作り方

第4講
就業規則はなぜ必要か|会社を守るルールブックの作り方

就業規則は、会社にとって単なる社内文書ではありません。労働条件、服務規律、休職、懲戒、退職など、雇用管理の共通ルールを定める中核文書です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成・届出義務があり、記載すべき事項も法律で定められています。労働基準法89条は、始業終業時刻、休日休暇、賃金、退職に関する事項などを就業規則に定めるべきものとして挙げています。さらに、意見聴取手続に関する90条、制裁の制限に関する91条も、就業規則運用の重要な基礎です。

使用者側実務で就業規則が重要なのは、個別対応の場面で「会社の共通ルール」があるかどうかが決定的な差になるからです。たとえば、遅刻や無断欠勤が続く社員に指導する場合でも、服務規律や懲戒事由が規則に定められていなければ、会社の対応は場当たり的に見えやすくなります。休職命令、復職判定、降格、定年後再雇用、退職手続なども同様で、規則がなければ会社の説明は弱くなります。

もっとも、就業規則は「ある」だけでは足りません。実務では、古いひな形を長年使い回し、現場運用とずれている会社が少なくありません。たとえば、テレワーク規定がないのに在宅勤務を常態化させている、ハラスメント規程があるのに相談窓口が実態として機能していない、休職規定はあるが復職判断基準が曖昧で担当者ごとに扱いが違う、といった状態です。これでは、いざ紛争になったとき、就業規則は会社を守るどころか、「守っていないルール」として逆に不利に働きます。

また、就業規則は労働契約法上も重要です。労働契約法7条は、合理的な労働条件が定められた就業規則が周知されている場合、その労働条件が契約内容になるという枠組みを置いています。さらに、不利益変更については労働契約法10条が合理性の判断枠組みを定めています。つまり、就業規則は単なる社内マニュアルではなく、一定の場合には労働契約内容そのものを形成する法的文書です。

会社を守る就業規則を作るには、まず自社で実際に起こりうる場面を想定する必要があります。採用、異動、休職、懲戒、定年、再雇用、情報持出し、副業、在宅勤務など、起こりうる論点ごとに、誰が読んでも運用できる程度にルールを明文化することが大切です。そして、作成後は周知が必要です。周知されていなければ、せっかく整備した規則も法的効力の土台を欠きます。就業規則とは、作ることが目的ではなく、会社の管理を標準化し、後から説明可能にするためのルールブックです。

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