第6回 契約の整理|賃貸借・リース・システム契約をどう処理するか

契約の整理|賃貸借・リース・システム契約をどう処理するか

法人破産管財で契約処理の出発点になるのは、破産法53条以下です。53条は、破産手続開始時に当事者双方がまだ履行を完了していない双務契約について、破産管財人が解除するか、破産者側の債務を履行して相手方の履行を求めるかを選べるという基本構造を置いています。さらに54条は、相手方から相当期間を定めた催告があったのに管財人がその期間内に意思表示をしないときは、解除したものとみなす建付けを採っています。つまり、開始決定後の契約整理は、「全部自動的に終わる」のでも「全部当然に続く」のでもなく、管財人が選別し、しかも放置はできないというのが条文の骨格です。

この基本構造を法人破産の現場に落とすと、最初にやるべきことは、契約を三つに分けることです。すなわち、①明渡しや返却を急ぐべき契約、②短期間だけ維持した方が財団価値を守れる契約、③名称だけでは法的整理が読めない契約、の三類型です。東京地裁の法人用「打合せ補充メモ」が、預かり物品の中に賃貸借契約書リース契約書を明示し、さらに帳簿類や訴訟関係書類の持参まで求めているのは、契約整理が後回しの雑務ではなく、開始直後に財団管理の中核として洗うべき事項だと裁判所実務が見ているからです。

賃貸借契約では、まず「占有を残す意味があるか」を見ます。事務所、倉庫、工場、駐車場について、明渡しを急ぐべきか、それとも在庫換価・機械撤去・資料保全のために短期継続が必要かを切り分けるわけです。このとき53条の一般ルールだけでなく、56条の特則にも注意が要ります。法務省資料は、不動産賃貸人に破産手続が開始された場合に賃借人が対抗要件を備えているときは、双方未履行双務契約の一般規定は適用されず、賃貸借関係はそのまま継続すると説明しています。法人破産管財の文脈では、誰が賃貸人で誰が賃借人か、そしてどちらに開始決定が出たのかをずらして読むと事故が起きるので、まず当事者の立場と対抗要件の有無を確定するのが先です。

リース契約は、賃貸借より一段慎重に扱うべきです。法務省の検討資料でも、ファイナンス・リースは賃貸借という法形式を用いながら、その経済的・機能的実質が単純な賃貸借に解消されないものと説明されており、近時の担保法制の検討でも、倒産場面でリース貸主を別除権者として扱うかなど、なお重要論点として整理されています。したがって、管財実務では、契約の題名だけで「賃貸借だから53条」「担保だから別除権」と即断せず、引渡し済みか、所有権が誰にあるか、中途解約不可条項があるか、残額請求条項がどうなっているかを契約書ごとに点検する必要があります。ここは条文一発で切るというより、53条以下を起点にしつつ、契約実質を見に行く場面です。これは上の公式資料群から導かれる実務的な整理です。

システム契約、保守契約、クラウド利用契約のような継続的契約では、55条の発想が重要になります。e-Gov掲載の破産法は、破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、開始申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことだけを理由に、開始後の給付を拒めないというルールを置いています。したがって、会社の基幹システム、受発注システム、サーバ保守、SaaS利用が、在庫管理や売掛金回収、従業員給与計算、データ抽出のために短期間でも必要なら、管財人としては「過去の未払があるからすぐ止められて当然」と考えるのではなく、55条を念頭に短期維持の必要性を判断することになります。他方で、不要な契約まで惰性で残せば財団流出になるので、「何のために何日残すのか」を明確にして切るのが裁判所受けする整理です。

結局、契約の整理で大事なのは、契約名ではなく、財団との関係です。賃貸借なら、占有を残す価値があるか。リースなら、賃貸借に見えても担保的・金融的実質を持っていないか。システム契約なら、停止されると財産把握や換価がかえって崩れないか。53条以下は、そのための選別の枠組みを与える条文群です。裁判所に受ける管財は、「契約を切った数」ではなく、どの契約を、どの条文に乗せ、どの財団価値を守るために残し、どの負担を遮断するために切ったのかが見える管財です。

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