第23講  聴力障害・耳鳴りの後遺障害|聞こえの障害はどう認定されるか

第23講
聴力障害・耳鳴りの後遺障害|聞こえの障害はどう認定されるか

事故後に「聞こえづらい」「耳鳴りが続く」「会話が聞き取りにくい」といった症状が残ることがあります。こうした聴覚に関する障害は、外見からは分かりにくいため軽く見られがちですが、本人にとっては仕事や日常生活に大きな支障をもたらします。後遺障害の実務では、聴力低下と耳鳴りは似ているようで、認定の考え方がかなり異なることをまず押さえる必要があります。

聴力障害については、純音聴力検査などの結果をもとに、どの程度の聴力低下があるかが評価されます。片耳か両耳かによっても意味が違い、また単に音が聞こえにくいという訴えだけではなく、検査結果として客観化されていることが重要です。骨折、鼓膜損傷、内耳障害、頭部外傷など、事故態様との関連も問題になります。受傷直後からの経過が一貫しているか、治療記録が残っているかも大切です。

これに対し、耳鳴りは実務上やや難しい類型です。耳鳴りは本人には非常につらい症状であっても、外から見えず、他人にも分かりにくいため、立証が難しくなりやすいのです。そこで、聴力検査の結果、耳鼻科の所見、症状経過、外傷との関連などを総合して評価することになります。単に「キーンという音がする」と述べるだけでは足りず、事故後いつから始まり、どの程度継続し、生活にどんな影響があるのかを丁寧に示す必要があります。

この分野で特に重要なのは、事故との因果関係です。聴力低下や耳鳴りは、加齢、既往症、騒音曝露など他の要因でも起こりうるため、相手方や保険会社から「本当に事故が原因なのか」が争われることがあります。そのため、受傷直後から耳症状が記録されているか、頭部や耳周辺の外傷があったか、画像所見や診療録上の裏づけがあるかが重要になります。

また、聴覚障害は日常生活の質に大きく影響します。会話の聞き取り、電話対応、会議、接客、危険察知など、多くの場面で支障が出ます。とくに対人コミュニケーションが中心の仕事では、外形上は分かりにくくても実際の負担は非常に大きいことがあります。したがって、後遺障害認定のための資料だけでなく、具体的にどの場面で困っているかを整理しておくことが、賠償実務でも意味を持ちます。

聴力障害・耳鳴りの事案では、「検査結果さえあれば足りる」というわけでも、「つらさを訴えれば足りる」というわけでもありません。客観資料と症状経過、生活実態を組み合わせて、見えにくい障害を見える形にしていく作業が必要です。聞こえの障害は軽く扱われがちですが、だからこそ丁寧な立証が重要になります。

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