第45講  医療照会・医師面談は必要か|資料だけでは足りないときの発想

第45講
医療照会・医師面談は必要か|資料だけでは足りないときの発想

後遺障害の案件では、診断書や診療録、検査結果といった書面資料が基本になります。しかし、案件によっては、それだけでは十分に伝わらないことがあります。症状の意味づけが曖昧である、事故との関係が読み取りにくい、日常生活への影響が診療録に十分表れていない、あるいは高次脳機能障害のように生活場面での現れ方が重要である、といった場合です。そうしたときに検討されるのが、医療照会や医師面談です。

医療照会とは、主治医や関係医療機関に対し、診療経過や医学的見解について質問を行うことです。医師面談は、さらに踏み込んで、実際に医師と会って症状の理解、検査の意味、今後の見通しなどを確認する手法です。これらはどの案件でも当然に必要というわけではありませんが、資料だけでは評価の核心が伝わらないときには、非常に有効なことがあります。

たとえば、画像所見が弱い一方で神経学的所見や臨床経過に意味がある案件では、その意味づけを主治医がどう考えているかが重要になります。また、高次脳機能障害や遷延性意識障害のような案件では、検査数値だけではなく、事故後の変化や日常生活能力の評価が問題になります。この種の事案では、自賠責でも専門部会を設けて慎重に判断する体制がとられており、難しい事案ほど医学的理解の補強が重要になります。

もっとも、医療照会や医師面談は、単に「味方になってもらう」ために行うものではありません。そこを誤ると、かえって逆効果です。大切なのは、医師が実際にどう見ているのかを確認し、その見解が資料にどう表れているか、足りない点があるならどのような追加資料や説明で補えるかを見極めることです。医師に法的な結論を求めるのではなく、医学的事実を明確にするのが本来の役割です。

また、医師面談を行う場合には、質問項目を整理しておくことが重要です。症状の推移、治療の目的、残存症状の内容、日常生活への影響、検査結果の意味、事故との関連性、症状固定の時期など、何を確認したいのかを明確にしておかないと、雑談のようになって終わってしまいます。医師の時間は限られているため、面談の質は準備で決まると言ってよいでしょう。

さらに注意すべきなのは、医師との関係を損なわないことです。医師は診療の主体であり、賠償請求の当事者ではありません。無理に結論を求めたり、こちらの筋書きに合わせた発言を期待したりすれば、当然に警戒されます。むしろ、診療録や診断書だけでは伝わりにくい点を丁寧に確認し、正確な理解を共有するための機会として位置づけるべきです。

結局、医療照会や医師面談は、資料の不足を“精神論”で埋める手段ではありません。資料から読み取れることと、読み取りにくいことを峻別し、後者を医学的に補うための方法です。後遺障害案件では、資料がすべてと言われがちですが、本当に重要なのは「資料に何が書かれていないか」を見抜くことでもあります。その不足を埋める発想として、医療照会や医師面談には確かな意味があります。

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