第46講 異議申立てで勝てる案件・勝ちにくい案件|見極めのポイント
第46講
異議申立てで勝てる案件・勝ちにくい案件|見極めのポイント

後遺障害等級認定に納得できないとき、被害者側がまず検討するのが異議申立てです。もっとも、異議申立ては「とりあえずもう一度見てください」という制度ではありません。損害保険料率算出機構も、異議申立てにあたっては主張を裏付ける新たな資料の添付が重要であることを明示しています。したがって、勝てる案件と勝ちにくい案件の差は、感情の強さではなく、何を補強できるかにあります。
勝てる可能性があるのは、第一に、認定時に十分な資料が揃っていなかった案件です。たとえば、後からMRI画像が追加できる、神経学的検査結果が出せる、可動域測定が適切になされる、家族の観察記録や勤務先資料で生活・就労支障を補強できる、といったケースです。初回申請時の資料不足は実務上珍しくなく、その不足を具体的に埋められるなら、異議申立てには意味があります。
第二に、診断書や既存資料の読み方に工夫の余地がある案件です。診断書の記載が簡潔すぎて症状の核心が伝わっていない、診療録には重要な記載があるのに初回申請時に十分整理されていない、事故態様や治療経過との関係づけが弱い、という場合です。このような案件では、新しい検査がなくても、資料の再整理と説明の仕方によって評価が変わることがあります。
第三に、高次脳機能障害や非器質性精神障害など、もともと慎重審査が予定される類型です。こうした案件では、日常生活状況報告、神経心理学的検査、家族・介護者の具体的観察など、通常の整形外科案件とは異なる補強資料が重要になります。自賠責でも、異議申立事案や難しい後遺障害案件は外部専門家が参加する審査会の対象とされており、補強資料の質が結果に直結しやすい領域です。
逆に、勝ちにくい案件は、資料の中身を変えられない案件です。たとえば、事故直後から症状固定まで一貫して通院が粗い、必要な検査がほとんどなく、今から追加しても遡及的な意味づけが難しい、診療録に重要症状の記載が乏しい、症状自体がかなり主観的で客観化が困難、といった場合です。もちろん絶対に無理とは言いませんが、異議申立てで結果を動かすのは容易ではありません。
また、「初回申請で落ちたのだから、もう一回出せばひょっとする」という発想も危険です。異議申立ては回数ではなく中身です。資料が増えないのに申立てだけ重ねても、結果は変わらないことが多いです。むしろ、どこが弱かったのかを正確に分析し、その弱点に対応する資料が本当にあるのかを見極める必要があります。
したがって、異議申立てを考えるときには、まず「なぜ今回の認定になったのか」を冷静に分解しなければなりません。画像か、神経所見か、通院経過か、診断書か、生活支障の立証か。弱点の所在が分からないままでは、補強の方向も決まりません。異議申立ては、落ちた結果に怒る手続ではなく、落ちた理由に合わせて資料を作り直す手続です。
勝てる案件とは、最初から強い案件という意味ではありません。弱点が見えており、その弱点を後からでも埋められる案件です。逆に勝ちにくい案件とは、弱点は見えていても、それを埋める素材自体が残っていない案件です。この見極めができるかどうかで、異議申立ての実益は大きく変わります。