第24講  歯・顎・咀嚼機能の後遺障害|顔面外傷で問題になる論点

第24講
歯・顎・咀嚼機能の後遺障害|顔面外傷で問題になる論点

交通事故で顔面を受傷すると、歯が折れる、抜ける、顎がずれる、口が開きにくくなる、噛みにくくなるなどの障害が残ることがあります。こうした歯・顎・咀嚼機能に関する後遺障害は、見た目の問題と機能の問題が重なりやすく、しかも歯科・口腔外科領域特有の資料が必要になるため、実務上は見落とされやすい分野の一つです。

まず代表的なのは、歯牙欠損や歯牙の破折です。前歯なのか臼歯なのか、本数は何本か、補綴でどこまで回復したかなどによって評価が変わります。単に歯が欠けたというだけでなく、咀嚼機能への影響、発音への影響、見た目への影響などを含めて考える必要があります。顔面外傷では、形成外科や整形外科の資料だけでなく、歯科や口腔外科の資料が極めて重要になります。

次に問題になるのが、咬合障害です。上下の歯の噛み合わせがずれてしまい、食べ物をうまく噛めない、顎が疲れる、顎関節に痛みが出るといった症状が続く場合があります。噛み合わせの問題は本人の訴えとしては強いのに、外から見えにくく、診断書上もあっさり記載されてしまうことがあるため注意が必要です。どのような食事がしにくいのか、治療後もどの程度不自由が残っているのかを把握することが大切です。

さらに、開口障害も重要な論点です。口が大きく開かない状態になると、食事、会話、歯科治療、あくびなど日常の多くの動作に支障が出ます。顎関節や下顎骨骨折の後に問題になることがあり、開口量の測定など客観的評価が行われます。こうした数値資料があるかどうかは、後遺障害の立証で大きな意味を持ちます。

この分野では、見た目・機能・治療後の残存障害を分けて考えることが重要です。たとえば歯が欠けたとしても、補綴で外見上はかなり回復している場合があります。しかし、それでも噛みにくさや顎の不具合が残ることはあります。逆に、機能的にはある程度回復していても、前歯部の欠損や変色が心理的・対人的に大きな負担になることもあります。どの障害をどの資料で支えるのかを整理しなければなりません。

また、歯・顎の障害は、自賠責の等級認定だけでなく、治療費、将来の補綴更新費、慰謝料、逸失利益にも関わります。とくに若年者では、差し歯やインプラント、補綴物の交換が将来にわたって必要になることもあり、その視点を落とすべきではありません。

歯や顎の障害は、命に関わる重傷に比べれば軽く見られがちですが、食べること、話すこと、見た目という、人間の基本的な営みに直結する障害です。だからこそ、単なる「歯のけが」で終わらせず、機能障害としてどう残っているかを丁寧に捉える必要があります。

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