第25講  上肢の後遺障害|肩・肘・手に障害が残ったときの見方

第25講
上肢の後遺障害|肩・肘・手に障害が残ったときの見方

腕や手は、仕事でも日常生活でも極めて使用頻度の高い部位です。そのため、交通事故で肩、肘、手関節、手指などに障害が残ると、本人の不自由は非常に大きくなります。上肢の後遺障害は、可動域制限、痛み、しびれ、筋力低下、巧緻運動障害など、多様な形で現れるため、どの機能がどの程度落ちているのかを分解して整理することが重要です。

まず典型的なのは、可動域制限です。肩が上がらない、肘が伸びきらない、手首が十分に曲がらないといった障害は、整形外科での測定結果が重要になります。可動域制限は比較的客観化しやすい反面、測定時期や方法によって数値が変わりうるため、症状固定時に適切な計測がされているかを確認する必要があります。関節拘縮、骨折後変形、腱損傷などが背景になることもあります。

次に、神経症状です。上肢では頚椎由来の症状だけでなく、腕神経叢や末梢神経の損傷によって、しびれや感覚低下、筋力低下が生じることがあります。神経症状は本人の自覚が強くても、画像や検査でどこまで裏づけられるかが問題になりやすい分野です。そのため、症状の部位、持続性、筋萎縮の有無、筋力検査所見などを総合して整理する必要があります。

さらに、上肢では巧緻運動障害が極めて重要です。箸が使いにくい、ボタンを留めにくい、字が書きにくい、パソコン入力が遅くなる、細かい工具が扱いにくいといった障害は、単なる可動域制限や痛みだけでは捉えきれません。手指の障害は日常生活にも就労にも直結しやすく、とくに事務職、技術職、医療職などでは大きな支障になります。実務では、こうした具体的支障を生活実態として拾い上げることが大切です。

上肢の事案で注意すべきなのは、画像所見があるから必ず重く評価されるわけではなく、逆に画像所見が乏しくても機能障害が無視できない場合があるという点です。骨折後の変形や関節面不整のように画像で明らかなケースもあれば、腱や神経、疼痛中心のケースでは所見の出方が限定的なこともあります。したがって、画像、診察所見、可動域、筋力、生活状況を立体的に組み合わせる必要があります。

また、上肢の障害は、左右差が重要です。利き手かどうかによって、実際の生活・労働への影響は大きく異なります。後遺障害の等級そのものは一定の基準に従いますが、損害賠償実務では、利き手障害であることが逸失利益や慰謝料の評価に影響することがあります。

上肢の後遺障害は、「動くか動かないか」だけでなく、「どれくらい痛いか」「どれくらいしびれるか」「どれくらい使いにくいか」という多層的な問題です。だからこそ、単に診断名を並べるのではなく、腕や手が実際にどのように使えなくなったのかを具体的に示すことが重要になります。

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