第26講 下肢の後遺障害|股関節・膝・足首に障害が残った場合
第26講
下肢の後遺障害|股関節・膝・足首に障害が残った場合

交通事故で脚を受傷すると、歩く、立つ、しゃがむ、階段を上り下りする、といった基本動作に大きな影響が及びます。下肢の後遺障害は、上肢以上に移動能力や就労能力に直結しやすく、症状が残れば生活の質を大きく下げます。実務では、どの関節・どの部位に、どのような機能障害が残っているのかを丁寧に整理することが重要です。
まず典型的なのは、股関節、膝関節、足関節の可動域制限です。骨折後、靱帯損傷後、手術後などに可動域が十分に戻らず、正座ができない、しゃがめない、階段がつらい、長時間歩けないといった症状が残ります。関節可動域は測定値が重要になりますが、それだけでなく、日常生活上どの動作が制限されているかを具体化することも大切です。
次に重要なのが、歩行障害です。跛行、支持性の低下、杖の使用、長距離歩行困難などは、本人の生活への影響が非常に大きい一方で、診断書上では十分に伝わらないことがあります。歩行障害は関節障害だけでなく、痛み、筋力低下、神経障害、脚長差などさまざまな要因から生じます。そのため、なぜ歩きにくいのかを医学的に整理しつつ、生活実態も含めて捉える必要があります。
また、下肢では疼痛の持続も大きな問題です。骨折は癒合していても、荷重時痛、歩行時痛、階段痛、寒冷時増悪などが続くことがあります。痛みは主観的と思われがちですが、圧痛所見、画像所見、手術歴、リハビリ経過などから一定の裏づけが得られる場合があります。実務では、単なる「痛い」ではなく、どの動作で、どの程度、どのくらい続くのかを整理することが重要です。
さらに、変形障害や短縮障害が残るケースもあります。骨癒合後の変形、関節面の不整、脚長差などは、歩行や姿勢に長期的な影響を及ぼします。これらは比較的客観化しやすい一方で、実際の生活への影響を具体的に描かないと、損害論の場面で十分に反映されないことがあります。
下肢の障害は、就労面でも極めて重要です。立ち仕事、運搬業務、介護、建設、営業など、移動や立位保持を要する職種では影響が大きく、デスクワーク中心の職種でも通勤や日常動作の負担は無視できません。したがって、後遺障害の認定だけでなく、どの程度仕事の幅が狭まったのかまで見据える必要があります。
下肢の後遺障害では、画像や可動域だけで判断すると見落としが生じやすいことがあります。歩行、荷重、痛み、疲労感、転倒リスクなど、脚という部位特有の支障を丁寧に拾い上げることが重要です。脚の障害は、生活の土台そのものに関わる問題だからです。