第35講 独身時代の財産や相続財産はどうなるのか|特有財産の基本
第35講
独身時代の財産や相続財産はどうなるのか|特有財産の基本

財産分与の対象になるのは、婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産が中心です。これに対して、婚姻前から持っていた財産や、婚姻中であっても相続や贈与によって個人的に取得した財産は、一般に特有財産として扱われ、財産分与の対象外となるのが原則です。
たとえば、結婚前から持っていた預金、独身時代に購入した不動産、親から相続した遺産、個人に対する贈与などは、基本的にその人固有の財産です。これは、夫婦の協力によって形成されたものではないからです。離婚だからといって、相手の相続財産を当然に半分もらえるわけではありません。
もっとも、実務では「特有財産だから終わり」と単純にはいかないことも多いです。典型例は、特有財産が婚姻中の家計と混ざってしまっている場合です。婚姻前預金が生活費口座に組み込まれ、入出金を繰り返して原型を失っていると、どこまでが特有財産でどこからが共有財産かが不明確になります。相続財産を元手に買った不動産でも、婚姻中の返済や維持管理に夫婦の協力が入っている場合には、評価が問題になることがあります。
また、特有財産であることを主張する側には、その裏付けが必要です。通帳、贈与契約書、遺産分割協議書、入出金履歴などによって、婚姻前取得や相続取得の経過を示せなければ、共有財産性を争われることがあります。感覚的には「自分のもの」と思っていても、資料で説明できなければ実務上不利になることがあります。
財産分与では、共有財産を広く捉える一方で、特有財産をきちんと区別することも重要です。独身時代の財産や相続財産は原則として分与対象外ですが、その主張には資料と整理が必要です。共有か特有かの線引きは、離婚実務の重要な基礎論点の一つです。