育児・介護休業法の最新改正と実務対応───2025年施行改正を踏まえ、企業がいま見直すべきポイント

2025年施行改正を踏まえ、企業がいま見直すべきポイント

2024年5月に育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日施行分2025年10月1日施行分に分けて段階的に実施されました。したがって、2026年3月現在は、これらの改正内容がすでに現場運用の前提になっています。今回の改正は、単に休業制度を置くだけでなく、個別周知、意向確認、意向聴取、配慮、情報提供までを含めて、企業の対応をより具体的に求める方向に進んだ点に大きな特徴があります。

厚生労働省の特設サイトでも、2024年度調査として、育児休業取得率は**女性86.6%、男性40.5%**と公表されており、制度は「あるだけ」の段階から、「実際に取得・利用されること」を前提にした運用へ移っています。法改正は、この社会的流れを前提に、企業に対し、より踏み込んだ両立支援体制の整備を求めるものといえます。

1 育児分野で押さえるべき最新改正

まず、2025年4月1日施行の改正として重要なのが、子の看護休暇の見直しです。名称は**「子の看護等休暇」となり、対象となる子の範囲は小学校就学前までから小学3年生修了までに拡大されました。取得事由にも、従来の病気・けが、予防接種・健康診断だけでなく、感染症に伴う学級閉鎖等や入園式・入学式、卒園式が加わっています。また、労使協定で除外できる労働者から、継続雇用6か月未満が外され、除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の労働者**に限られるようになりました。

同じく2025年4月1日施行で、所定外労働の制限(いわゆる残業免除)の対象も拡大されています。従前は3歳未満の子を養育する労働者が対象でしたが、改正後は小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求できるようになりました。中小企業を含め、現場で「まだ3歳未満だけが対象」という旧理解のまま運用していると、制度違反を招きかねません。

さらに、育児休業等の取得状況の公表義務は、2025年4月1日から従業員数300人超の企業にまで拡大されました。これまでは1,000人超企業が中心でしたが、今後は300人超1,000人以下の企業でも、男性の育児休業等取得割合などの公表が必要です。該当企業では、単に取得率を把握するだけでなく、算定方法や公表時期まで含めた社内管理が必要になります。

そして、2025年10月1日施行分として特に重要なのが、柔軟な働き方を実現するための措置の義務化です。3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は、始業時刻等の変更、月10日以上のテレワーク、保育施設の設置運営等、年10日以上の養育両立支援休暇、短時間勤務制度という5つのメニューの中から、2つ以上を選んで導入しなければなりません。労働者は、その中から1つを選んで利用できる建付けです。ここは、制度を1つだけ置けば足りるわけではない点に注意が必要です。

加えて、企業は、子が3歳になる前の一定時期に、労働者に対して、導入した措置の内容、申出先、残業免除・時間外労働制限・深夜業制限などについて、個別に周知し、利用意向を確認しなければなりません。また、本人または配偶者の妊娠・出産申出時や、子が3歳になる前の時期には、勤務時間帯、勤務地、制度利用期間、業務量や労働条件の見直し等に関する意向を個別に聴取し、その意向に配慮する義務も課されます。単に制度一覧を配布するだけでは足りず、個別対応のプロセスが法的に重視されるようになったと理解すべきです。

2 介護分野の改正は「離職防止」が中心テーマ

介護分野では、2025年4月1日から、介護離職防止のための事業主対応が大幅に強化されました。まず企業は、介護休業や介護両立支援制度等を利用しやすくするため、研修の実施、相談窓口の整備、利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知のいずれかの措置を講じなければなりません。実務的には、相談窓口の名ばかり設置では足りず、誰が、どのタイミングで、どの資料を用いて対応するかまで設計しておく必要があります。

また、労働者から「介護に直面した」との申出があった場合、企業はその労働者に対し、介護休業制度、介護両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金に関する事項個別に周知し、利用意向を確認しなければなりません。方法も、面談、書面交付、FAX、電子メール等と整理されており、FAXや電子メール等は労働者が希望した場合に限られます。ここも、制度があること自体より、きちんと周知し、確認した記録を残せるかが重要です。

さらに、企業は、労働者が介護に直面する前の早い段階として、40歳到達時期に、介護休業制度等に関する情報提供をしなければなりません。情報提供事項は、制度内容、申出先、介護休業給付金に関する事項であり、40歳到達日の属する年度またはその翌日から1年間のいずれかの期間で実施する必要があります。介護は育児と異なり、申出が突然発生しやすいため、改正法は「いざ介護が始まってから説明する」のでは遅いと考えているわけです。

このほか、介護休暇について継続雇用6か月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みが廃止され、また、要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるようにする措置も、事業主の努力義務となりました。介護分野の改正は全体として、「介護休業を取らせるかどうか」だけでなく、離職に至る前に、働きながら介護を継続できる仕組みを整えることに重点が置かれています。

3 弁護士実務の視点からみた争点

今回の改正で実務上もっとも重要なのは、紛争の中心が「制度の有無」から「周知・聴取・配慮の中身」へ移ると考えられる点です。これは推測ではありますが、改正が、個別周知、意向確認、意向聴取、配慮、40歳時の情報提供といった、運用プロセスそのものを義務化している以上、将来の紛争では、「制度は就業規則に書いてあった」というだけでは不十分で、いつ、誰に、何を、どう説明し、どのように意向を聴き、どう検討したのかが問われやすくなるとみるのが自然です。

企業側としては、就業規則の改定だけで安心せず、個別周知書、意向確認書、意向聴取記録、面談記録、社内周知資料、相談窓口運用ルールまで含めて整備すべきです。厚生労働省も、令和7年2月作成の規定例・社内様式例・労使協定例を公表しており、2025年4月1日・10月1日施行対応版が利用可能です。実務では、これらをたたき台にして自社仕様へ落とし込むのがもっとも現実的です。

また、厚生労働省は、2025年9月24日時点の令和6年改正育児・介護休業法Q&Aも公開しています。運用に迷う場面では、条文やパンフレットだけでなく、このQ&Aや規定例まで確認しておくことが、後の説明可能性を高めます。制度設計の精度が、そのまま紛争予防の精度につながる場面です。

4 まとめ

育児・介護休業法の最新改正は、企業に対し、単なる制度整備ではなく、実際に使える制度として周知し、本人の意向を聴き、必要な配慮を行うことまで求めています。とりわけ2025年10月施行分まで含めると、育児分野では柔軟な働き方の具体的設計が、介護分野では離職防止のための初動対応が、これまで以上に重要になりました。2026年3月現在、まだ旧制度感覚で運用している企業にとっては、就業規則・様式・面談運用の総点検が急務です。

育児や介護を理由とする働き方の問題は、労使双方にとって感情的対立に発展しやすいテーマです。しかし、初動の説明と記録が整っていれば、防げる紛争は少なくありません。企業側でも労働者側でも、制度の正確な理解と、事実経過の丁寧な整理が重要です。実際の運用や個別事案でお悩みの方は、早い段階で弁護士にご相談されることをおすすめします。

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