第18講 離婚訴訟になったらどうなるか|調停との違いと見通し
第18講 離婚訴訟になったらどうなるか|調停との違いと見通し

離婚調停がまとまらなかったとき、次に出てくるのが離婚訴訟です。
ただし、離婚訴訟は、調停の延長で「もう少し強めに話し合う場」ではありません。裁判所は、離婚の裁判をするには原則として先に調停を経る必要があるとしたうえで、人事訴訟は当事者双方が言い分を述べ合い、証拠を出し合い、最終的に裁判官の判決で解決を図る手続だと説明しています。調停が話合い中心なのに対し、訴訟は判断中心です。
したがって、離婚訴訟に入ると、景色はかなり変わります。
調停では「どこで折り合えるか」が中心でしたが、訴訟では「何が法的に認められるか」が中心になります。しかも、調停は非公開ですが、人事訴訟は特別な事情がある場合を除いて公開の法廷で行われます。ここが、当事者の体感としても大きな違いです。
まず、離婚訴訟に進めるのは、原則として調停が不成立になった後です。
裁判所のQ&Aは、離婚の裁判には原則として調停前置が必要で、相手方が行方不明である場合など、調停をすることが不可能なときに限って、最初から裁判ができる場合があるとしています。つまり、「いきなり訴訟」は例外で、本筋は調停→不成立→訴訟です。
訴訟を起こす裁判所は、原則として当事者の住所地を受け持つ家庭裁判所です。
裁判所は、離婚であれば夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所が原則管轄だと案内しており、訴訟前に扱った家事調停の裁判所が別にある場合には、その家裁で人事訴訟を扱うこともあるとしています。訴えの提起には、訴状、手数料、郵便切手、戸籍謄本などが必要です。
離婚訴訟で争われるのは、離婚するかどうかだけではありません。
裁判所の離婚訴訟案内では、未成年の子がいる場合には親権者指定について記載が必要だとされ、養育費を請求する場合の収入資料、財産分与を請求する場合の財産資料、年金分割の申立てをする場合の情報通知書の提出準備も求められています。つまり実務では、離婚原因だけでなく、親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料などが訴訟の中で争点化しやすいです。
訴訟が始まると、まず原告が訴状を出し、被告は答弁書で応じます。
裁判所のQ&Aでも、訴えを起こされた側には訴状と期日の呼出状が届き、相手の言い分に反論して自分の言い分を示すために、答弁書を提出して期日に出頭するよう案内しています。ここから先は、準備書面のやり取りと証拠提出が中心になっていきます。
調停との最大の違いは、訴訟では「主張の出し方」と「証拠の出し方」が強く問われることです。
大阪家庭裁判所の離婚訴訟に関する協力依頼でも、離婚請求については離婚原因の根拠条文を示し、不貞、別居、暴力暴言などの具体的事実や時期を明確に主張するよう求めています。親権者指定では現在の監護状況を具体的に、養育費では現在の年収を、財産分与では基準日を早期に明確にするよう求めています。つまり、訴訟は「気持ちをわかってもらう場」より、争点を細かく切り分けて証拠化する場です。
離婚原因そのものについても、訴訟ではかなり法律的な整理が必要です。
神戸家裁の離婚訴訟案内は、訴状の「請求の原因」に、民法770条1項のどの離婚事由に当たるのかを記載するよう求めています。また、事実関係は離婚原因を主張するのに必要な範囲で整理して記載するよう求めています。つまり、訴訟では「もう無理です」だけでは足りず、法定離婚事由や婚姻破綻を支える具体的事実の整理が必要になります。
子どもに関する争いがある事件では、家庭裁判所ならではの関与もあります。
裁判所は、人事訴訟は基本的に民事訴訟の一種だとしつつも、家庭裁判所の人事訴訟では、参与員が審理や和解の試みに立ち会って意見を述べたり、親権者指定などについて家庭裁判所調査官が子どもに面接して調査したりすることがあると説明しています。つまり、通常の民事訴訟よりも、子どもの利益や家庭事情を掘る機能が入りやすいのが特徴です。
ここで一つ大事なのは、離婚訴訟に入っても、必ず判決まで行くとは限らないことです。
裁判所は、人事訴訟は判決で終わるほか、離婚訴訟や離縁訴訟については和解で解決することができると説明しています。つまり、訴訟に入った後も、争点整理が進むにつれて、当事者双方が条件面で折り合い、和解で終わることはあります。訴訟は「判決しか出口がない場」ではありません。
ただし、調停と和解は似ているようで少し違います。
調停は最初から話合いで合意を目指す手続ですが、訴訟上の和解は、あくまで判決に向かう手続の途中で、裁判所の見通しや争点整理を踏まえて成立する合意です。したがって、訴訟に入ると、単に「話し合いましょう」ではなく、このまま進むと裁判所がどう見そうかという圧力の中で和解が動きやすくなります。これは、調停より訴訟の方が条件交渉の重みが増す理由の一つです。
判決まで進んだ場合、裁判官が離婚を認めるかどうか、また関連する請求をどう扱うかを判断します。
人事訴訟手続の裁判所案内では、判決が確定した場合、その内容に応じて戸籍の届出等が必要になり、金銭支払を目的とする内容であれば支払を受けることができ、応じない場合には地方裁判所で強制執行手続をとることができるとしています。つまり、訴訟は「話合いに失敗したら終わり」ではなく、最終的に国家判断で決着を付けるための手続です。
そして、今の時期は制度変更にも注意が必要です。
2026年3月28日現在、離婚後の親権はまだ単独親権が前提ですが、裁判所は2026年4月1日以降の手続について、離婚後の親権者を父母双方とするか一方とするかを扱う新しいページを設けています。法務省も、改正後は裁判所が父母と子との関係、父母同士の関係その他一切の事情を考慮して、子の利益の観点から最善の判断をする仕組みだと説明しています。したがって、親権が争点になる離婚訴訟は、4月をまたぐかどうかで見え方が変わります。
見通しという点では、離婚訴訟は調停より重い手続です。
調停は当事者の合意がまとまれば成立しますが、訴訟は、離婚原因、親権、養育費、財産分与などについて、主張と証拠を積み上げて裁判所の判断を受ける場です。だから、調停段階では雰囲気や感情で押せたことも、訴訟では通りにくくなります。反対に、証拠と法的整理がある側は、訴訟に入ってから急に強くなることがあります。これは、裁判所が訴訟を「言い分と証拠を出し合って判決を目指す手続」と位置付けていることからの実務上の帰結です。