第11講 不動産相続のポイント|共有にしてよい場合と危ない場合

第11講 不動産相続のポイント|共有にしてよい場合と危ない場合

相続財産の中でも、不動産は特に扱いが難しい財産です。
預金のように数字で分けにくく、住む、貸す、売る、保有し続けるといった選択肢ごとに利害が分かれやすいからです。しかも現在は相続登記が義務化されており、不動産を相続したことを知った以上、「あとで考える」という放置がしにくくなっています。相続によって不動産の所有権を取得した相続人には3年以内の登記申請義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。

不動産相続では、まず登記をどうするか、次に誰が取得するか、そして共有にするのか避けるのかを考える必要があります。
特に共有は、一見すると公平で穏当な解決に見えますが、後からかなり重い問題を生みやすい形です。法務省も、遺産分割がまとまるまでは相続人全員が法定相続分に応じて共有している状態になる一方、共有状態の財産の管理・処分は不便が多く、次の世代の相続でさらに複雑化すると案内しています。

1 まず相続登記を放置しない

不動産相続では、何よりも登記の問題を先送りしないことが大切です。
法務省によれば、相続や遺言により不動産の所有権を取得した相続人は、相続開始と取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。さらに、遺産分割が後で成立した場合には、その成立日から3年以内に、その内容を踏まえた登記申請も別途必要です。相続人申告登記で基本的義務を果たせる場面はありますが、遺産分割成立後の追加的義務まではこれで代替できません。

したがって、「まだ誰が不動産を取るか決まっていない」という場合でも、最低限、登記義務をどう履行するかは早めに検討すべきです。
不動産相続では、話合いの成熟を待つことと、登記義務を放置することは同じではありません。

2 遺産分割前は、いったん共有状態になる

相続が始まり、不動産についてまだ遺産分割が成立していない段階では、その不動産は相続人全員が法定相続分に応じて共有している状態になります。
法務省系の案内でも、相続人間の協議がまとまるまでは、相続人全員が民法上の相続分の割合で共有している状態になると説明されています。

この「いったん共有になる」というのは、あくまで遺産分割までの出発点です。
問題は、そのまま共有を固定してしまうかどうかです。共有のままにすると、後の管理・売却・建替え・担保設定などで意思決定が重くなりやすく、しかも相続が重なるほど関係者が増えていきます。法務省も、共有状態は不便が多く、さらに次の世代の相続で権利関係が複雑化すると案内しています。

3 共有が危ない理由

共有が危ない最大の理由は、意思決定が重くなることです。
民法は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要とし、共有物の管理に関する事項は持分価格の過半数で決すると定めています。つまり、行為の内容によって必要な同意のレベルが違いますが、少なくとも「誰か一人の自由で全部決められる」状態ではありません。

このルールからすると、売却、建替え、担保設定、長期の処分的な利用などは、実務上かなり詰まりやすくなります。
一方で、日常的な管理は過半数で決められる場面があるとしても、相続人同士の関係が悪いと、その過半数形成自体が難しいことがあります。これは条文と法務省の「共有状態は不便が多い」という説明から導かれる実務上の帰結です。

さらに、共有は「いずれ解消できるから安全」というものでもありません。
民法上、各共有者は共有物の分割を請求することができ、裁判所は現物分割、価格賠償を伴う取得、競売といった方法で分割を命じ得ます。国土交通省関東地方整備局の資料でも、裁判所は現物分割、持分取得と償金支払、競売命令の方法をとり得ると整理されています。つまり、共有の維持を望む人がいても、別の共有者から解消を求められる可能性があります。

4 共有にしてよい場合はあるか

あります。
ただし、かなり限定的です。実務感覚としては、短期間の仮置きであること、関係者が少なく意思疎通が良いこと、収益物件で管理方針が一致していること、最終的な売却や単独取得までのつなぎであること、こうした条件がそろうなら共有が機能する余地はあります。これは、民法上、管理は持分過半数、変更は同意が必要というルールと、法務省が共有状態の不便さを指摘していることを踏まえた実務的な評価です。

逆に、共有者が多い、感情対立がある、遠方居住で連絡が取りにくい、将来売るか住むか方針が割れている、といった事情があるなら、共有はかなり危険です。
相続人間で一時的に公平に見える処理が、数年後には「何も決められない土地・建物」を作ることがあります。法務省が、時間の経過と次世代相続による複雑化を問題視しているのは、まさにこの点です。

5 実務では「共有回避」の選択肢を先に考える

不動産相続では、共有にする前に、他の分け方がないかを先に考える方が実務的です。
典型的には、①一人が不動産を取得して他の相続人に代償金を支払う、②売却して代金を分ける、③現物分割できる土地なら分筆等を検討する、という方向です。共有物分割の裁判でも、現物分割、価格賠償を伴う取得、競売という方法が想定されており、これは遺産分割の交渉段階でも参考になります。

この中で、地方の実務で特に使いやすいのは、単独取得+代償金か、売却して換価分割です。
住み続ける人がいるなら単独取得が自然ですし、誰も使わない不動産なら売却して現金化した方が、後の紛争を避けやすいです。これは制度上の分割方法と、共有の不便さを踏まえた実務的な帰結です。

6 誰もいらない土地には国庫帰属制度もあるが、万能ではない

「誰も欲しくない土地」をどうするかは、地方の相続で非常に現実的な問題です。
法務省は、相続や遺贈で土地を取得した人が、一定の要件のもとでその土地を国庫に帰属させることができる相続土地国庫帰属制度を設けています。申請先は土地所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。

もっとも、これは「いらない土地を自由に国へ渡せる制度」ではありません。
法務省は、建物がある土地、担保権等が設定されている土地、通路など他人の利用が予定される土地、崖地や管理処分に過分の費用・労力を要する土地など、却下・不承認となる類型を明示しています。したがって、山林や原野なら何でも出せるわけではなく、実際には使える場面を選びます。

7 相続登記の書類では、不動産の表示が特に重要

不動産を遺産分割で誰かに取得させるなら、協議書や登記申請書の不動産表示は登記記録どおりに書く必要があります。
法務局の案内やチェックシートでも、不動産の表示は登記事項証明書や要約書のとおり正確に記載するよう求められており、遺産分割協議書には法定相続人全員の実印押印と印鑑証明書の添付が必要とされています。

つまり、不動産相続では「だれが取るか」の合意だけでは足りません。
その不動産がどの土地・建物なのかを登記簿ベースで特定し、相続人全員の関与が外から見て分かる形に落とし込んで初めて、登記まで通ります。

8 まとめ|不動産は「とりあえず共有」がいちばん危ないことがある

不動産相続では、まず相続登記の義務を意識し、誰が取得するかを早めに整理することが大切です。
現在は相続登記が義務化されており、相続開始や遺産分割成立から3年以内という期限があります。共有状態は法律上の出発点にはなりますが、そのまま固定すると管理・処分が不便になり、さらに次世代相続で権利関係が複雑化しやすいと法務省も案内しています。

そのため、不動産については、共有にしてよいかではなく、まず共有を避けられないかから考える方が安全です。
単独取得と代償金、売却して換価分割、必要に応じて国庫帰属制度の検討など、共有以外の着地点を先に探る方が、後の紛争予防には役立ちます。

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