第28講 寄与分とは何か|介護や家業貢献はどこまで評価されるのか

第28講

寄与分とは何か|介護や家業貢献はどこまで評価されるのか

相続では、「あの人は生前にもらっていた」という不公平だけでなく、「自分だけが親のためにずっと動いてきたのに、相続では同じ割合なのはおかしい」という不満も強く出ます。この後者を、遺産分割の中で一定程度調整する仕組みが寄与分です。裁判所は、共同相続人のうち、被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与した者には、法定相続分のほかに寄与分が認められると説明しており、京都家庭裁判所も、寄与分はその人の相続分を増やして具体的相続分を算定する場面だと整理しています。

寄与分が問題になる典型は、家業への無償従事、金銭の持ち出し、療養看護などです。京都家庭裁判所は、寄与分の類型として、被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法を挙げていますし、全国共通の裁判所手続案内でも、労務の提供、財産上の給付、療養看護その他の方法による特別の寄与をした相続人が申立人になれるとしています。つまり、寄与分は「介護だけ」の制度ではなく、家業や資金面の貢献も含めて考える制度です。

もっとも、ここで一番大事なのは、家族として普通に期待される程度を超えているかという点です。京都家庭裁判所は、寄与分が認められるためには、親族間において通常期待される程度を超えた貢献が必要であり、単に他の相続人より貢献の度合いが大きいというだけでは足りないと明示しています。山形・山口の家庭裁判所資料も同趣旨で、家族の協力・扶助を超えた特別の貢献が必要だとしています。したがって、「自分がいちばん世話をした」という感覚だけで直ちに寄与分になるわけではなく、その貢献が相続分を増やすほど特別だったのかが問われます。

裁判所が示している要件の整理も重要です。京都家庭裁判所は、寄与分が認められるためには、特別の寄与であること、財産の維持又は増加と因果関係があること、寄与行為に対して対価を受けていないこと、相続開始時までの寄与であることが必要だとまとめています。つまり、単に長年近くにいたとか、気持ちの面で支えたというだけでは足りず、その行為が財産の維持増加にどう結び付いたか、報酬を受けていなかったかまで見られます。

ここで実務上よく問題になるのが、介護です。介護は感情的には最も強く訴えやすい寄与ですが、法律上は「通常の親族扶助を超えたか」が厳しく見られます。京都家庭裁判所や山口家庭裁判所が繰り返し強調しているように、単に他の相続人より多く世話をしたというだけでは足りません。たとえば、長期間にわたり、自宅で相当程度の療養看護を無償で担い、その結果として本来必要だった費用支出を抑え、被相続人の財産維持に具体的に結び付いたといえるか、というように見られます。寄与分は「苦労した人への慰労金」ではなく、「財産の維持増加に結び付いた特別な無償貢献の評価」だからです。

家業従事も同じです。家業を長く手伝っていたとしても、相応の給料を受けていたなら、無償又はそれに近い特別の労務提供とは評価されにくくなります。逆に、長年にわたり無償又は著しく低い対価で働き、その結果として被相続人の事業財産が維持・増加したといえるなら、寄与分の主張が現実味を帯びます。京都家庭裁判所が、寄与の類型として家業従事型を挙げる一方、対価を受けていないことを要件に置いているのは、そのためです。

また、寄与分は当然に裁判所が拾ってくれる論点ではありません。京都家庭裁判所は、寄与分の主張をするなら、寄与の時期、方法、程度その他の事情を明らかにして記載し、その裏付けとなる資料を提出するよう求めています。山形・山口・盛岡の家庭裁判所資料も、寄与分は当然に認められるものではなく、主張する側が裏付け資料を準備しなければならないとしています。したがって、介護記録、通院付添いの資料、送金記録、立替金の証憑、事業への従事状況、給与実態など、証拠で詰めないと、寄与分は感情論のままで終わりやすいです。

手続の面でも注意が必要です。裁判所によれば、調停で寄与分を主張して分割方法まで含めて合意できるなら、直ちに別個の申立てが必須というわけではありません。しかし、寄与分が争点となって合意できない段階では、寄与分を定める処分調停・審判の申立てが必要になります。さらに、全国共通の裁判所案内では、寄与分を定める処分調停は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所などに申し立てる手続として整備されています。つまり、寄与分は「遺産分割の雰囲気で何となく上乗せされる」ものではなく、争いになれば独立の家事手続として処理される論点です。

結局のところ、寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別に貢献した者がいるとき、その貢献を具体的相続分に反映させる制度です。ですが、家族として普通に期待される範囲を超えること、財産の維持増加と結び付くこと、無償性があること、証拠で裏付けられることが必要です。相続で「自分だけが尽くしてきた」という話が出たときは、その思いをそのまま結論にするのではなく、まず寄与分の要件に落ちるかを冷静に見なければなりません。

第29講では、ここからさらに、特別寄与料とは何か|相続人でない親族が介護していた場合を扱います。寄与分は相続人の制度ですが、近年は相続人でない親族の貢献をどう扱うかも別の制度で問題になります。

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