第39講 遺産分割調停とは何か|家庭裁判所での話し合いはどう進むのか

第39講

遺産分割調停とは何か|家庭裁判所での話し合いはどう進むのか

遺産分割調停は、相続人同士の話合いがつかないときに、家庭裁判所で合意による解決を目指す手続です。裁判所は、被相続人が亡くなり、その遺産の分け方について相続人間で話合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判を利用できると案内しています。申立ては、相続人のうちの一人または数人が、他の相続人全員を相手方として行うのが基本です。

ここで大事なのは、調停は「裁判官がすぐ結論を言い渡す場」ではないという点です。調停では、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出を受け、場合によっては遺産の鑑定も行いながら、各当事者の希望を確認し、解決案を示したり助言したりして、最終的な合意を目指します。つまり、調停は判決ではなく、あくまで裁判所が関与する話合いの場です。

申立先にもルールがあります。裁判所の案内では、遺産分割調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただし、相手方が複数いて管轄裁判所が複数にまたがる場合には、そのうちのどこかに申し立てることができ、さらに当事者全員の合意があれば別の家庭裁判所に申し立てることもできます。

申立てに当たっては、単に「もめています」と書けば足りるわけではありません。裁判所は、申立書のほか、当事者目録、遺産目録、相続関係図などの書類を提出する前提で案内しており、実際に受理した後も、追加の照会や事情聴取を行うことがあるとしています。費用については、被相続人一人あたり収入印紙1,200円が必要で、別途郵便料もかかります。

調停の中身は、感覚的な話合いではなく、かなり順序立っています。仙台家庭裁判所のQ&Aでは、調停の流れとして、まず相続人と法定相続分の確定、次に遺産の範囲の確定、その後に遺産の評価、さらに特別受益・寄与分の整理を経て、最後に具体的な分割方法へ進むと説明されています。つまり、最初から「家は誰が取るか」だけを争うのではなく、前提を一つずつ固めていく手続です。

この手続では、裁判所が勝手に遺産を探してくれるわけではありません。仙台家庭裁判所のQ&Aも、主張したいことは自分で裏付け資料を集めて提出する必要があると説明しています。したがって、預金なら通帳や取引履歴、不動産なら登記事項証明書や評価資料、生前贈与なら送金記録や契約書など、結局は当事者側で資料を積み上げないと話は前に進みません。

期日の進み方にも実務上の特徴があります。東京家庭裁判所の案内では、調停は平日の昼間に行われ、1回の時間はおおむね2時間程度とされ、申立人と相手方はそれぞれ待合室で待機したうえで、交互または同時に調停委員会から事情を聴かれる形が取られると説明されています。つまり、一般の民事法廷のように公開の法廷で一気に言い合うのではなく、比較的整理されたかたちで話を進める手続です。

調停のポイントは、「感情を全部解決する場」ではないことです。仙台家庭裁判所のQ&Aも、感情的な問題の調整はしつつも、主眼はあくまで遺産をどう分けるかにあるとしています。相続では、介護負担、生前の不公平、兄弟間の確執が強く出やすいですが、調停で中心になるのは、最終的には遺産の範囲、評価、分け方です。

そして、話合いがまとまらなければどうなるか。裁判所は、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始されると案内しています。その後は、裁判官が、遺産の種類や性質、その他一切の事情を考慮して審判をすることになります。つまり、遺産分割調停は「だめなら終わり」ではなく、調停から審判へ連続して進む入口でもあります。

結局のところ、遺産分割調停とは、家庭裁判所が間に入り、相続人全員を当事者として、相続人の範囲、遺産の範囲、評価、特別受益・寄与分、分割方法を順番に整理しながら、合意を目指す手続です。いきなり白黒をつける訴訟とは違いますが、資料と主張が薄ければ前に進みにくく、まとまらなければそのまま審判に移るという意味で、十分に重い手続でもあります。

第40講では、遺産分割審判とは何か|話し合いでまとまらないとき裁判所はどう決めるかを扱います。調停が不成立になった後、最終的に裁判所がどのように割り切るのかが次の論点です。

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