第38講 相続人廃除と相続欠格とは何か|相続できなくなる制度の違い

第38講

相続人廃除と相続欠格とは何か|相続できなくなる制度の違い

相続では、そもそも「この人は相続人になるのか」という入口で外れる制度があります。それが相続欠格相続人廃除です。どちらも最終的には「相続できなくなる」方向の制度ですが、同じではありません。法務局の相続登記ガイドブックは、欠格について、故意に被相続人や自己と同一順位又は先順位の相続人を死亡させたり、遺言書を偽造するなど、相続のために犯罪行為を行った場合と説明し、廃除については、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行を理由に、家庭裁判所が被相続人による請求を認めた場合と整理しています。つまり、欠格は法律上当然に外れる制度であり、廃除は被相続人の意思と家庭裁判所の判断で外す制度です。

まず、相続欠格は、一定の重大な非行があった者について、法律が当然に相続資格を否定する仕組みです。法務省資料や関連資料では、民法891条の欠格事由として、故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させる行為、相続に関する被相続人の遺言をさせたり撤回させたり変更させたりするための詐欺・強迫、さらに被相続人の遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿が挙げられています。したがって、欠格は「親にひどいことをした」という一般的不道徳さではなく、相続秩序そのものを害するような重大行為が対象です。

この点で、欠格はかなり機械的です。要件に当たれば、家庭裁判所に「廃除してください」と申し立てて初めて効くのではなく、法律上当然に相続人となることができません。法務局ガイドブックが欠格を「こういう場合」と端的に整理しているのも、その性質を示しています。実務感覚でいえば、欠格は例外的で件数も多くありませんが、問題になるときはかなり深刻な事案です。

これに対して、相続人廃除は、被相続人に対する背信行為があった推定相続人を、被相続人の意思に基づいて相続から外す制度です。法務省資料は、民法892条について、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、重大な侮辱を加え、又はその他の著しい非行があったときは、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できると整理しています。ここで重要なのは、廃除の対象が「遺留分を有する推定相続人」であることです。つまり、廃除は、もともと最低保障まで持っている近い親族を、例外的に相続から外すための制度です。

したがって、廃除の理由は、欠格よりも少し性質が違います。欠格が相続秩序を壊す重大犯罪・遺言妨害類型を中心とするのに対し、廃除は、被相続人との人的関係を著しく破壊する行為が中心です。法務省資料にある「虐待」「重大な侮辱」「その他の著しい非行」という文言からも、そのことが分かります。実務では、単なる不仲や疎遠だけで足りるわけではなく、かなり強い背信性が必要になります。

手続も大きく違います。欠格は法律上当然に問題になるのに対し、廃除は家庭裁判所の関与が必要です。裁判所の申立書類一覧でも、「推定相続人の廃除」は独立の家事事件として整理されており、生前であれば被相続人本人が、遺言による場合であれば遺言者死亡後に遺言書や検認調書の写しなどを添えて申し立てる構造になっています。また、遺言による場合で家庭裁判所が選任した遺言執行者が申し立てるときは、その選任審判書謄本も必要とされています。つまり、廃除は「遺言に書けば当然に確定する」のではなく、最終的には家庭裁判所の審判で固まる制度です。

さらに、廃除には取消しの制度もあります。法務省の部会資料では、廃除については一方通行ではなく、民法894条により被相続人がいつでも廃除の取消しを請求できると説明されていますし、裁判所実務の書類一覧でも「推定相続人の廃除の審判の取消し」が別事件として立っています。つまり、廃除は、被相続人の意思に基づく制度である以上、その後の事情変更や被相続人の考えの変化に応じて、撤回・取消しがあり得る仕組みです。この点も、当然効果である欠格との大きな違いです。

両者を実務的に整理すると、こうなります。欠格は、一定の重大行為があれば法律上当然に相続資格を失う制度で、相続のための殺人、遺言妨害、遺言書の偽造・破棄・隠匿などが典型です。廃除は、遺留分を有する推定相続人について、虐待・重大な侮辱・著しい非行があるときに、被相続人の請求又は遺言に基づいて家庭裁判所が相続から外す制度です。欠格は自動的、廃除は審判が必要。欠格は相続秩序侵害型、廃除は人的関係破壊型。この二つの軸で見ると、混同しにくくなります。

第39講では、ここから手続面に入り、遺産分割調停とは何か|家庭裁判所での話し合いはどう進むのかを扱います。相続の紛争は、結局ここに流れ込むことが多く、手続の流れを知っているかどうかでかなり違います。

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