第40講 遺産分割審判とは何か|話し合いでまとまらないとき裁判所はどう決めるか

第40講

遺産分割審判とは何か|話し合いでまとまらないとき裁判所はどう決めるか

遺産分割審判とは、相続人同士の話合いで合意できなかったときに、家庭裁判所が最終的に分割方法を決める手続です。裁判所は、遺産分割調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が、遺産に属する物や権利の種類・性質その他一切の事情を考慮して審判をすると案内しています。つまり、審判は「話合いの延長」ではありますが、合意形成ではなく、最後は裁判所が割り切って決める段階です。

もっとも、審判は最初から必ず最後に来るわけではありません。裁判所のFAQでは、最初から審判を申し立てることも可能だが、その場合でも裁判所の判断で審判に先立って調停に付されることがあると説明されています。したがって、制度の建て付けとしては「審判先行」もあり得ますが、実務ではまず話合いの可能性を探る流れが強いと理解しておいた方がよいです。

審判に入ると、裁判所は当事者全員の希望をそのまま足して真ん中を取るわけではありません。千葉家庭裁判所の案内では、裁判官は、遺産と確定された財産について、その評価額を基に、財産の種類や性質その他一切の事情を考慮して分割の審判をするとされています。大阪家庭裁判所の案内も、調停で話合いがつかないときは、遺産の種類や性質を考慮しながら、法定相続分とは異なる分け方をすべき事情の有無や程度などについて厳密な審理が行われると説明しています。つまり、審判は単なる法定相続分の機械的割り算ではなく、個別事情を踏まえた裁判所の判断です。

ただし、その前提として、裁判所が審判で決められるのは、あくまで遺産分割として判断できる範囲です。山口家庭裁判所のQ&Aでは、相続人の範囲や遺言の効力などの前提問題に争いがある場合は、訴訟などで先に解決する必要があり、その場合には調停や審判を進めることができないとしています。大阪家庭裁判所の案内も、親子関係や婚姻・養子縁組の有効無効など戸籍の前提問題が争われる場合には、遺産分割の前に別途の人事訴訟や家事調停等が必要になると説明しています。つまり、審判は万能ではなく、「誰が相続人か」「遺言が有効か」といった土台が固まっていることが前提です。

そのため、審判の中身も、いきなり結論だけが出るわけではありません。最高裁家庭局の説明資料では、家事審判手続の流れとして、書面照会、調査官調査、審問期日などが示されています。つまり、審判は「一回裁判所に行って終わり」の制度ではなく、必要な資料をそろえ、事情を聴き、調査を経て判断される手続です。調停よりは裁判所主導が強まりますが、それでも証拠や資料が薄ければ、裁判所は適切な判断をしにくいのは同じです。

実務で重要なのは、審判でも検討順序は基本的に変わらないという点です。大阪家庭裁判所の案内や仙台家庭裁判所のQ&Aが示すとおり、相続人の範囲、遺産の範囲、評価、特別受益、寄与分などを整理したうえで、最終的な分割方法が問題になります。つまり、審判になったからといって、感情論だけで一気に決まるわけではなく、むしろ前提問題をより厳密に詰めたうえで、裁判所が法的に割り切る段階に入るということです。

そして、審判の結果は、必ずしも当事者が望んだ形になるとは限りません。山口家庭裁判所のQ&Aは、審判では裁判官が法律に従って適正に判断するが、必ずしも相続人それぞれが期待したとおりの結果が出るとは限らないと明記しています。大阪家庭裁判所の案内も、審判による分割方法には限界があり、たとえば競売でしか分けられない場合など、相続人各自の生活状況や希望に沿えない結論になり得ると説明しています。審判は「公平そうに見える第三者がうまくまとめてくれる場」ではなく、合意できない以上、どこかで硬い結論が出る場です。

だからこそ、裁判所も一貫して「調停でよく話し合うこと」の重要性を強調しています。山口家庭裁判所は、相続人それぞれの実情に応じた良い解決をするためには、調停でよく話し合うことが大切だとしていますし、大阪家庭裁判所も、機会があればいつでも話合いで解決する用意を最後まで失わないよう努めてほしいと案内しています。要するに、審判は必要な制度ですが、柔らかい解決をしにくいという限界を裁判所自身が認めているのです。

もっとも、審判で終わりというわけでもありません。山口家庭裁判所のQ&Aでは、審判に不服がある場合には、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告を申し立てることができると説明されています。したがって、審判は強い結論ではありますが、全く争えない最終確定とは限らず、なお不服申立ての余地が残る場合があります。

結局のところ、遺産分割審判とは、調停で合意できなかったときに、家庭裁判所が前提問題と資料を整理したうえで、遺産の種類・性質・評価・各種事情を踏まえて最終的な分割方法を決める手続です。審判になると、当事者の希望は一つの事情にはなっても、それ自体では決まらず、裁判所が法的に割り切ります。だから、審判は「頼れる最後の出口」ではありますが、同時に「思いどおりにはなりにくい出口」でもあります。調停での合意が難しい案件ほど、審判の現実を早めに意識しておくことが大切です。

第41講では、使い込みを責めたいとき何をするか|遺産分割だけで足りるのかを扱います。審判まで行っても解けない論点の典型が、この使途不明金・無断払戻しの問題です。

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