第18講 可動域制限とは何か|曲がらない・上がらないをどう証明するか

第18講 可動域制限とは何か|曲がらない・上がらないをどう証明するか

後遺障害というと、痛みやしびれを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、交通事故実務では、関節が曲がりにくい、腕が上がらない、膝が伸びきらない、といった可動域制限も重要なテーマです。肩、肘、手関節、股関節、膝、足関節など、関節機能障害は日常生活と就労に直接影響しやすく、後遺障害認定でも中心的な争点になります。

可動域制限で重要なのは、「動かしづらい」という主観だけではなく、角度としてどこまで動くのかが測定されることです。後遺障害の実務では、関節可動域を他動値・自動値などの形で測定し、健側との比較や参考可動域との比較によって障害の程度を評価します。つまり、可動域制限は比較的“見える”障害ですが、その分、測定の正確さが強く問われます。

ここで注意したいのは、測定値が一度出ればそれで足りるわけではないということです。事故後の治療経過、骨折や靱帯損傷の有無、手術歴、リハビリ内容、拘縮の残存状況など、可動域制限に至るまでの医学的経過が整っていないと、単発の測定結果だけでは十分に評価されにくいことがあります。また、測定者によって差が出ることもあり、後遺障害診断書の記載が雑だと、認定で不利になることがあります。

関節ごとに争点も変わります。肩関節なら挙上障害や外転制限、肘なら屈曲・伸展障害、膝なら屈曲や伸展制限、足関節なら背屈・底屈制限など、どの運動がどの程度制限されているかが問題になります。実務では、日常生活で何ができないかという事情も重要ですが、等級認定の入口ではまず角度の世界です。したがって、本人の困り感と、測定値をどう結びつけるかがポイントになります。

また、可動域制限の案件では、疼痛による動かしにくさと、関節そのものの機能障害をどう区別するかも問題になります。痛いから動かせないのか、物理的に関節が動かないのかで、評価が変わることがあります。もちろん現実には両者が重なっていることも多いのですが、資料上はそれをどう整理するかが問われます。

可動域制限は、一見すると客観的で争いが少なそうに見えますが、実際には測定方法、記載内容、健側比較、治療経過との整合性など、細かな点で結論が左右されます。曲がらない、上がらないという現実の不自由を、角度という客観資料に落とし込み、さらに生活・仕事への影響につなげていくことが重要です。見える障害だからこそ、測定の精度が勝負になります。

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