第21講  醜状障害とは何か|傷跡が残ったときの評価の考え方

第21講
醜状障害とは何か|傷跡が残ったときの評価の考え方

交通事故や労災のあと、痛みやしびれだけでなく、顔や体に傷跡が残ることがあります。こうした「見た目」に関わる後遺障害は、一般に醜状障害と呼ばれます。被害者本人にとっては、日常生活上の苦痛だけでなく、対人関係、就労、心理的負担にも深く関わる重大な問題です。しかし、実務では、痛みや可動域制限に比べると、どのような場合に後遺障害として評価されるのかが十分に理解されていないことも少なくありません。

醜状障害でまず重要なのは、単に「傷がある」というだけではなく、それが外貌や露出部にどの程度残り、どの程度目立つのかという観点で評価されることです。とくに問題になりやすいのは顔面、頭部、頚部などの外貌部分であり、他方で上肢や下肢などについても、露出の程度や瘢痕の大きさ・性状によっては後遺障害として扱われます。瘢痕の長さ、面積、色調、盛り上がり、陥凹、拘縮の有無などが実務上の検討対象になります。

ここで注意したいのは、醜状障害は**「美容上気になるかどうか」だけで決まるものではない**ということです。後遺障害の認定では、一定の基準に照らして外貌の変化が客観的に評価されます。そのため、本人にとっては非常に大きな苦痛であっても、資料の出し方や写真の撮り方、診断書の記載が不十分だと、認定の場面では適切に反映されないことがあります。

実務では、写真資料の質が極めて重要です。真正面だけでなく、斜め方向や近接写真、傷の大きさが分かる比較資料などを揃えることで、瘢痕の性状が伝わりやすくなります。医師の診断書にも、単に「瘢痕あり」と書くだけでなく、部位、大きさ、形状、色調、固定状況などをできる限り具体的に記載してもらう必要があります。形成外科の所見が有効なこともあります。

また、醜状障害は、見た目の問題にとどまらず、慰謝料や労働能力への影響とも結びつくことがあります。接客業や営業職など、外貌が職務に影響しやすい職種では、後遺障害逸失利益の判断にも関わる場合があります。つまり、等級認定そのものだけでなく、その後の損害賠償請求全体の組み立ての中で位置づけることが大切です。

醜状障害の事案では、「命は助かったのだから」「機能障害が重くないから」と周囲から軽く見られてしまうことがあります。しかし、被害者本人にとって外見の変化が与える影響は深く、長く続くことがあります。だからこそ、傷跡の問題を過小評価せず、どの部位に、どのような瘢痕が、どの程度残っているのかを丁寧に可視化することが出発点になります。

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