第27講  脊柱の変形・痛みの後遺障害|背骨の障害をどう捉えるか

第27講
脊柱の変形・痛みの後遺障害|背骨の障害をどう捉えるか

交通事故で背骨を損傷すると、圧迫骨折、椎体変形、可動性障害、慢性的な腰背部痛などが残ることがあります。脊柱の障害は、神経麻痺のように分かりやすい重症例から、画像上は一定の変形があるものの症状の強さに幅がある例までさまざまです。そのため実務では、脊柱そのものの形態異常と、そこから生じる機能障害・疼痛を分けて考えることが重要になります。

代表的なのは、脊椎圧迫骨折後の変形です。胸椎や腰椎の骨折後、椎体がつぶれて楔状変形を残すことがあります。これは画像上ある程度明確に把握できる一方で、その変形が生活にどれほど影響しているかは別途検討が必要です。長時間座れない、前かがみがつらい、荷物を持てない、起床時に強い痛みがあるなど、具体的支障を確認することが大切です。

また、脊柱では可動性の障害も問題になります。頚椎、胸椎、腰椎それぞれで、前屈、後屈、回旋などの動きが制限されることがあり、これが日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。とくに腰椎の可動性低下は、立ち座り、洗面、着替え、物の持ち上げなど基本動作に直結します。可動域の測定や診察所見の記録が重要になります。

さらに、脊柱障害で避けて通れないのが痛みの問題です。事故後、骨折や打撲の治療を経ても、腰痛や背部痛が慢性化することがあります。脊柱の痛みは非常に訴えが多い一方で、画像所見と症状の強さが必ずしも一致しないことも多く、立証上の難しさがあります。そのため、受傷経過、画像所見、診察所見、リハビリ経過、日常生活上の支障を総合して評価する必要があります。

注意すべきなのは、脊柱の障害ではしばしば既往症や加齢性変化との区別が争われることです。椎間板変性、脊柱管狭窄、骨粗鬆症などが背景にあると、保険会社側から「事故前からの変化ではないか」と指摘されることがあります。したがって、事故前の症状の有無、受傷態様、事故後にどのように症状が出たかを丁寧に追う必要があります。

また、脊柱の障害は、後遺障害等級の問題だけでなく、将来にわたる就労・生活維持への影響とも深く関わります。座位保持がつらい、重量物が持てない、長時間の車の運転ができないなど、職種によっては大きな制約になります。痛みそのものに加え、再発不安や活動制限も現実の不利益として無視できません。

脊柱の後遺障害は、外見では分かりにくく、しかも痛み中心の事案では軽く見られやすい分野です。しかし、背骨は身体の軸であり、その障害は全身の動きに影響します。だからこそ、画像・機能・疼痛・生活支障を一体として捉える視点が必要になります。

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