第28講 CRPSとは何か|痛みが強いのに説明しづらい事案をどう見るか
第28講
CRPSとは何か|痛みが強いのに説明しづらい事案をどう見るか

事故後、骨折や手術そのものは終わっているのに、通常では説明しにくいほどの強い痛み、腫れ、皮膚の変色、発汗異常、関節拘縮などが続くことがあります。こうした状態の一部は、**CRPS(複合性局所疼痛症候群)**として問題になります。交通事故実務の中でも、CRPSは特に難しい分野の一つであり、症状が重いのに立証が難しいという特徴があります。
CRPSの難しさは、まず、単なる「痛みが強い」という話では終わらないところにあります。痛みの程度が受傷内容に比して強い、持続する、アロディニア(軽く触れただけで強い痛みが出る)、皮膚温の左右差、発汗異常、腫脹、色調変化、関節拘縮、骨萎縮など、さまざまな徴候が組み合わさって現れることがあります。したがって、患者本人の訴えを丁寧に聴くことに加え、診察所見をきちんと記録することが重要です。
この分野で特に重要なのは、早い段階からCRPSを疑って診療記録が残っているかという点です。後になって「実はCRPSだった」と主張しても、初期からの診療経過や所見が乏しいと説得力を持ちにくくなります。逆に、受傷後の経過の中で、痛みの強さ、皮膚変化、拘縮、温度差などが継続的に記録されていれば、大きな支えになります。
また、CRPSは、画像や一般的検査だけでは十分に説明できないことがあります。そのため、保険会社や相手方からは「気のせいではないか」「大げさではないか」といった見方をされやすく、被害者にとっては二重の苦痛になりがちです。しかし、CRPSはまさに**“客観化しにくいが、現実には強い障害をもたらす病態”**として知られており、だからこそ丁寧な医学的整理が必要なのです。
実務上は、痛みそのものだけでなく、関節可動域の低下、筋萎縮、使用困難、生活動作の制限を合わせて検討することが重要です。手が使えない、足をつけない、衣服が触れるだけで苦痛、リハビリが進まないなど、生活上の支障は非常に大きいことがあります。これを単なる主観症状として片づけず、診療記録や日常生活状況と結びつけて示す必要があります。
CRPSの事案は、後遺障害等級認定でも賠償交渉でも難航しやすい類型です。だからこそ、診断名だけに頼るのではなく、どの徴候があり、どの資料で裏づけられ、どのような生活支障があるのかを積み上げていくことが重要になります。痛みが強いのに説明しづらいからこそ、説明のための資料と構成が必要なのです。