第39講  喪失期間は何年になるのか|67歳・平均余命・症状固定年齢の問題

第39講
喪失期間は何年になるのか|67歳・平均余命・症状固定年齢の問題

逸失利益を考えるとき、労働能力喪失率と並んで大きな金額差を生むのが喪失期間です。これは、後遺障害による労働能力の低下が、賠償上、いつまで続くものとして評価されるかという問題です。期間が長くなれば逸失利益は大きくなり、短くなれば小さくなります。

実務では、就労可能年齢の一応の目安として67歳がよく用いられます。たとえば、症状固定時に40歳であれば、原則として67歳までの27年間を基礎に考えるという発想です。もっとも、この67歳という数字は絶対ではなく、あくまで経験則上の目安にすぎません。

高齢者では、症状固定時にすでに67歳を超えていることもあります。この場合でも、直ちに逸失利益がゼロになるとは限りません。現に就労していた、あるいは家事労働を担っていたなどの事情があれば、平均余命の一部や数年間を喪失期間として認めることがあります。逆に、67歳未満であっても、具体的な就労実態が乏しければ、常にフルに67歳まで認められるわけではありません。

また、後遺障害の内容によっては、症状が生涯続くとしても、賠償上の喪失期間を限定することがあります。代表的なのが、むち打ちによる神経症状です。医学的には痛みやしびれが長期に続くことがあっても、裁判実務では、12級や14級の神経症状について、一定年数に限って労働能力喪失を認める例が少なくありません。これは、症状の性質、改善可能性、客観的所見の程度などを踏まえた評価です。

一方で、切断、失明、高度の関節機能障害、高次脳機能障害など、恒久的な影響が明らかな場合には、比較的長期または就労終期までの喪失期間が認められやすくなります。つまり、喪失期間は、単に年齢だけでなく、障害の固定性・永続性とも密接に関係します。

さらに、若年者では、症状固定時点から67歳までの期間が非常に長くなるため、中間利息控除の影響も大きくなります。その結果、表面的には長期間でも、現在価値への引き直しによって計算結果が調整されます。それでもなお、喪失期間の設定が賠償額に与える影響は極めて大きいといえます。

家事従事者についても、喪失期間は問題になります。家事労働は67歳を境に当然に終わるものではなく、高齢でも継続するのが通常です。そのため、就労者とはやや異なる視点から、平均余命や生活実態を踏まえて検討されることがあります。

結局のところ、喪失期間は「何歳まで働くのが普通か」という抽象論だけでなく、「この人はこの障害を抱えて、どこまで就労や家事を続けられたはずか」という具体的評価です。年齢、職業、障害の性質、就労実態、症状の固定性を総合して判断する必要があります。

次回は、事故前から病気や体質上の問題があった場合に賠償額がどう影響を受けるのか、素因減額の考え方を扱います。

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