第41講  保険会社が等級を争うとき何を言ってくるのか|典型的な反論パターン

第41講
保険会社が等級を争うとき何を言ってくるのか|典型的な反論パターン

後遺障害の案件で保険会社側が等級や賠償額を争うとき、反論は無数にあるように見えて、実際にはかなり典型化されています。後遺障害とは、自動車事故により受傷した傷害が治った後に残った、医学的に認められる精神的又は肉体的な毀損状態であり、自賠責の後遺障害等級との関係で評価されます。したがって、争点も「本当に残っているのか」「事故によるものか」「どの程度重いのか」に収れんしていきます。

まず最も多いのが、「症状の一貫性」に対する反論です。事故直後の診療録には強い訴えがない、途中で訴えの内容が変わっている、左右や部位の表現がぶれている、日によって訴え方が違う、といった点を拾ってきます。とくにむち打ちや神経症状の案件では、画像所見が決定的でないことも多いため、保険会社は診療録上の表現の揺れを大きく扱いがちです。しかし、痛みやしびれの訴えが日によって変動すること自体は珍しくありません。問題は、変動があることそれ自体ではなく、症状経過として説明可能か、初診から症状固定までの流れが大きく破綻していないかです。

次に多いのが、「通院状況」に対する反論です。通院間隔が空いている、途中で中断がある、仕事や私生活はできていたのだから重くない、治療の必要性が高いならもっと継続的に通院しているはずだ、という形です。これは一見もっともらしく聞こえますが、現実には仕事、家庭事情、通院先の距離、保険会社からの打切り圧力などで通院が理想どおりに続かないことは珍しくありません。したがって、通院頻度が低いことだけで直ちに症状の信用性が崩れるわけではなく、なぜそういう通院状況になったのかを説明できるかが大事です。

さらに、「画像所見の弱さ」を突いてくることも典型です。MRIやCTで明確な異常がない、あっても加齢性変化の可能性がある、外傷性変化として決め手に欠ける、という整理です。これも実務では非常によく見ます。ただ、画像が弱いと不利にはなりやすいものの、画像が弱いから直ちに非該当というわけでもありません。神経学的所見、事故態様、受傷直後からの一貫した症状経過、検査結果、主治医の記載などを積み上げて、全体として事故との相当因果関係と残存症状の実在性を示すことになります。

また、「既往症・素因」の主張もよくあります。もともと頚椎に変性があった、腰椎ヘルニアがあった、精神的素因があった、以前から同様症状があったのではないか、という反論です。この場合は、事故前にどの程度症状があったのか、日常生活や就労に支障があったのか、事故後にどのような変化が生じたのかを丁寧に見ていく必要があります。既往症があることと、今回の事故による悪化や顕在化が否定されることとは、まったく別問題です。

保険会社側は、しばしばこれらを個別にではなく、まとめて「総合評価」として出してきます。すなわち、画像が弱い、通院が粗い、訴えが変動している、日常生活動作がある程度保たれている、だから後遺障害としては弱い、という組み立てです。これに対して被害者側も、個別反論だけでなく、事故直後から症状固定までの一本の物語として資料を組み立て直す必要があります。後遺障害の案件は、単発の強い証拠一つで決まるというより、弱い事情をいくつ積み上げて全体像を作れるかで勝敗が分かれることが多いのです。

したがって、保険会社が何を言ってくるかを知る意味は、単に反論を予習するためだけではありません。どこが攻撃されやすいのかを先に理解し、その穴を診療録、検査、生活状況、通院経過、家族の観察記録で埋めていくためです。後遺障害の実務では、「等級認定の結果を見てから考える」のでは遅く、争われるポイントを見越して受傷直後から証拠を整えていく発想が重要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA