第43講 整骨院・接骨院への通院はどう見られるか|病院通院との違い
第43講
整骨院・接骨院への通院はどう見られるか|病院通院との違い

交通事故後の痛みやしびれに対して、整骨院や接骨院に通う方は少なくありません。体感として楽になる、通いやすい、仕事帰りに行けるといった理由もあり、現実には非常に身近な選択肢です。ただし、賠償実務の観点からみると、整骨院・接骨院への通院は、病院や整形外科への通院と同じようには扱われません。ここを誤解すると、治療経過も後遺障害の立証も不安定になります。
まず押さえるべきなのは、後遺障害の認定や賠償で中核になるのは、医師による診断、検査、診療録、診断書であるということです。後遺障害の判断は医学的資料を前提に行われるため、整骨院・接骨院だけの通院では、認定の基礎となる資料が乏しくなりやすいのです。自賠責の損害調査や異議申立てでは、新たな資料や医学的裏付けが重視されますから、その意味でも病院通院の重要性は大きいです。
そのため、整骨院・接骨院に通うこと自体が直ちに悪いわけではありませんが、「病院に行かず整骨院だけ」という経過はかなり危ういと考えるべきです。実務では、整形外科で定期的に診察を受け、その補完として整骨院・接骨院を利用する、という形が比較的安全です。少なくとも、症状の経過、可動域、神経学的所見、画像所見の確認は医師の管理下で進めておく必要があります。
さらに重要なのは、整骨院・接骨院への通院について、医師の指示または少なくとも医師の認識があるかどうかです。保険会社はしばしば、「漫然と通っていただけではないか」「必要性が乏しいのではないか」と言ってきます。このとき、主治医が施術の併用を把握しており、一定の了解があることが示せれば、通院の位置づけはかなり説明しやすくなります。逆に、主治医に何も伝えず整骨院中心で進めていたとなると、全体の医療経過が分断されてしまいます。
また、整骨院・接骨院では、患者の主観的な痛みへの対応はなされても、後遺障害認定に必要な「他覚的所見」や医学的評価が十分に残らないことが多いです。したがって、賠償実務では、整骨院通院の回数それ自体よりも、病院でどのような診察・検査・記録が残っているかのほうがはるかに重要です。通院日数だけを増やしても、医学的資料が弱ければ、認定や交渉では苦しくなります。
整骨院・接骨院に通う場合に実務上大事なのは、病院通院を軸にすること、症状の変化を医師にもきちんと伝えること、施術内容や効果を必要以上に誇張しないことです。事故後の不調は日々の生活の中で現れるものですから、身体が楽になるための選択として整骨院を利用することは自然です。しかし、賠償の場では「楽だった」だけでは足りず、「その症状が事故によるもので、どのように継続し、どのような医学的評価を受けたか」が問われます。
要するに、整骨院・接骨院は補助線であって、本線ではありません。後遺障害を見据えるなら、主治医との連携を切らさず、病院通院を中心に据えることが不可欠です。実務では、この順序を逆にしないことが非常に重要です。