“ほったらかし投資”の落とし穴|相続・離婚・認知症に備える

NISAや投資信託の普及により、「長期・積立・分散」を前提とした“ほったらかし投資”は、今や特別なものではなくなりました。毎月一定額を積み立て、日々の値動きに一喜一憂せず、時間を味方につけて資産形成を目指す。この考え方自体は、非常に合理的です。

もっとも、「運用をほったらかしにすること」と、「法的な備えまで後回しにしてよいこと」は全く別の話です。
むしろ、積立投資を続けて資産が大きくなってくるほど、相続、離婚、認知症といった場面で問題が顕在化しやすくなります。

まず、相続です。
被相続人が証券口座やNISA口座で投資信託を保有していた場合、預貯金と違って家族がその存在や内容を十分に把握していないことがあります。どこの証券会社に口座があるのか、何を保有しているのか、評価額はいくらか、積立設定がどうなっているのかが分からないままでは、相続手続はスムーズに進みません。
特に、通帳のように目に見えにくい資産は、遺産分割協議の前提となる財産調査そのものが難航することがあります。

次に、離婚です。
投資信託や積立口座も、婚姻期間中に形成された財産であれば、財産分与の対象となる可能性があります。名義が夫婦の一方だけであっても、それだけで当然に「その人だけの財産」とは限りません。
また、積立開始時期、原資、入金状況によっては、特有財産と共有財産が混在して争点になることもあります。評価額をどの時点で見るのか、含み益をどう考えるのかといった点でも、意外に揉めやすい分野です。

さらに見落とされやすいのが、認知症や判断能力の低下の場面です。
投資は、完全な“自動運転”ではありません。口座情報の管理、住所変更、名義人確認、売却や解約の判断など、どこかで本人の意思確認が必要になる場面があります。
判断能力が低下した後では、家族が「代わりに解約する」「代わりに売却する」と簡単に進められるとは限りません。資産があるのに動かせない、必要な生活費や介護費用に充てにくいという事態も起こり得ます。

このように、“ほったらかし投資”の本当の落とし穴は、運用成績そのものではなく、本人に何かあったときの法的な受け皿がないことにあります。
口座の存在が家族に共有されていない、名義や原資の整理ができていない、将来の財産管理の準備がない——こうした状態では、せっかく積み上げた資産が、いざというときに家族の負担や紛争の火種になりかねません。

資産形成は「増やすこと」で注目されがちですが、本当に大切なのは、増やした後にどう守り、どう引き継ぎ、どう使える状態にしておくかです。
投資をしている方ほど、相続対策、夫婦間の財産整理、将来の財産管理の仕組みづくりまで含めて考えておく必要があります。

当事務所では、相続、離婚、財産管理に関するご相談を通じて、資産形成後の“守り”の部分についてもサポートしています。
「積立はしているが、家族に説明していない」「口座が増えて整理できていない」「将来の管理が少し不安」という方は、一度、法的な観点から資産の見え方・残し方を点検してみてはいかがでしょうか。

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