第16講 腰痛・腰椎捻挫で後遺障害は認められるか|頚部との違い
第16講 腰痛・腰椎捻挫で後遺障害は認められるか|頚部との違い

交通事故後に腰痛が続くケースは珍しくありません。しかし、腰部痛が残っているからといって当然に後遺障害が認められるわけではなく、頚部のむち打ちと同様、資料の積み上げが重要になります。他方で、腰部の案件には頚部とは少し違う難しさがあります。腰痛は日常的にも生じやすく、加齢変化や既往症との区別が問題になりやすいためです。
腰椎捻挫や外傷性腰部症候群の事案では、まず症状の内容を丁寧にみる必要があります。単なる腰痛にとどまるのか、下肢への放散痛やしびれがあるのか、長時間の座位や立位で悪化するのか、前屈や重量物運搬で制限があるのかによって、評価の方向は変わってきます。腰そのものの痛みだけでなく、下肢症状との関係は、神経症状としての位置づけを考えるうえで重要です。
また、腰部の案件では画像所見の意味づけが難しいことがあります。MRIで椎間板膨隆やヘルニア様所見、脊柱管狭窄がみられても、それが事故によるものなのか、もともとの変性所見なのかが問題になります。特に中高年では加齢変化が画像に現れていることが多く、事故との因果関係をどう説明するかが争点になりやすいのです。したがって、「画像に異常があるから大丈夫」とも、「加齢だから全部だめ」ともいえません。症状の出現時期、事故前の状態、診療経過との整合性が重要です。
頚部との違いとしては、腰部では仕事内容や生活動作との関係がより前面に出やすいという点もあります。たとえば、重量物運搬、長時間運転、立ち仕事、介護職など、腰への負担が大きい仕事では、腰痛の影響が現実の就労制限として表れやすくなります。逆に、仕事内容の実態が見えないと、症状が賠償上どこまで意味を持つのかが伝わりにくくなります。
認定実務では、腰痛案件も頚部と同じく14級9号や12級13号が問題になることが多いですが、腰部は既往症や変性所見との競合が起きやすいため、事故後の継続的な症状記録がいっそう重要になります。初診時から腰痛や下肢症状がどのように出ていたか、通院中にどう推移したか、神経学的所見がどうだったか、画像との対応がどう説明できるかを丁寧に拾わなければなりません。
腰痛の案件は、「首よりわかりやすい」と思われることもありますが、実際にはそう単純ではありません。既往症、加齢変化、仕事内容との関係が絡みやすく、因果関係の整理が難しいからです。腰椎捻挫で後遺障害が認められるかは、痛みの強さだけでなく、その痛みが事故と結びつき、継続し、資料で裏づけられているかにかかっています