第20講 子どもを連れて別居するときの注意点|連れ去りと評価されないために
第20講
子どもを連れて別居するときの注意点|連れ去りと評価されないために

夫婦関係が限界に達し、別居を決断するとき、未成年の子どもをどうするかは極めて重要な問題です。とくに、これまで主として子どもの世話をしてきた親が、子どもを連れて家を出ることは珍しくありません。しかし、その進め方を誤ると、後に親権や監護権を争う場面で、「不当な連れ去りではないか」と批判されることがあります。子どもの安全と生活の安定を守るための別居であるはずが、手続や経緯次第で不利な評価につながることがあるのです。
まず重要なのは、別居の目的と必要性です。DVやモラハラ、深刻な対立があり、子どもを連れて離れなければ安全が守れないという事情がある場合には、子どもを連れて別居すること自体が直ちに不当とはいえません。むしろ、監護を担ってきた親が子どもの生活を維持しながら避難することには合理性があります。他方で、相手方との関係を断つこと自体を主目的として、十分な準備なく急に子どもを移動させたり、学校や生活環境を大きく混乱させたりすると、子の利益の観点から問題視されることがあります。
次に重要なのは、従前の監護実態です。これまで主に養育してきた親が、日常の延長として子どもを連れて別居する場合と、これまであまり養育に関与してこなかった親が突然子どもを連れ出す場合とでは、評価は大きく異なります。裁判所は、子どもにとってどちらの生活がより連続性・安定性を持つかを重視するため、別居前からの関わり方が非常に重要です。
また、別居後の対応も軽視できません。相手方に対して全く説明をしない、子どもの所在を秘匿し続ける、面会交流の可能性を頭から閉ざすといった対応は、紛争を激化させることがあります。もちろん、安全確保の必要から所在秘匿が必要な事案もありますが、そうでない場合には、代理人を通じた連絡や、子どもの安否に関する最低限の情報提供など、適切な距離の取り方を考える必要があります。
子どもを連れての別居は、単に「先に動いた者が有利」という話ではありません。大切なのは、子どもの生活をどう守るか、そのためにどのような準備と配慮が必要かという点です。感情に任せて動くのではなく、別居後に親権・監護権・面会交流が争点化することまで見据え、できる限り整った形で行動することが重要です。