第28講 婚姻費用はいくらになるのか|算定表の見方と修正要素
第28講
婚姻費用はいくらになるのか|算定表の見方と修正要素

婚姻費用の金額は、実務上、裁判所が公表している算定表を出発点に考えることが多くなっています。これは、夫婦双方の年収と子どもの人数・年齢を組み合わせて、おおよその標準額を導くものです。そのため、婚姻費用の相談では、まず「双方の収入はいくらか」「子どもは何人で何歳か」という確認が非常に重要になります。
ただし、算定表を見れば自動的に答えが出るというわけではありません。年収の把握ひとつをとっても、給与所得者と自営業者では考え方が異なります。給与所得者であれば源泉徴収票が基礎になりますが、自営業者では確定申告書だけでなく、実際の経費の内容や収入の変動も見なければならないことがあります。表面上の数字だけでは生活実態を反映しないこともあるためです。
また、修正が問題になる場面も少なくありません。たとえば、子どもが私立学校に通っていて教育費が高額である場合、住宅ローンをどう考えるかが争いになる場合、相手が意図的に収入を低く見せている疑いがある場合などです。算定表はあくまで標準的なケースを前提とした目安であり、特別な事情があれば、そのままでは不合理になることがあります。
もっとも、「修正事情がある」と言うだけで簡単に金額が動くわけではありません。何にいくらかかっているのか、その支出が子どもや婚姻生活維持のために必要なのか、資料で示していく必要があります。ここでも客観資料が重要です。
婚姻費用の算定は、感覚的な「多い・少ない」ではなく、標準額を踏まえた上で、個別事情をどう乗せるかの作業です。算定表は便利な出発点ですが、それで思考停止しないことが大切です。