第2回 育児休業は誰がどこまで取れるのか|取得要件と申出実務

育児・介護休業法の相談では、「うちは正社員ではないが取れるのか」「妻が専業主婦でも取れるのか」「会社が忙しいと言っているが断られるのか」といった点が、実務上よく問題になります。結論からいえば、育児休業は一部の労働者だけの制度ではなく、一定の要件を満たせば、有期雇用労働者も含めて利用できる制度です。また、事業主は、要件を満たした申出に対して、単に業務が忙しいとか人手が足りないといった事情だけで休業を拒むことはできません。

まず、通常の育児休業についてです。厚生労働省の現行解説では、育児休業の対象は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者であり、日々雇い入れられる者は除かれます。また、期間を定めて雇用される労働者、いわゆる有期雇用労働者についても、申出時点で、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでない場合には、育児休業をすることができます。配偶者が専業主婦・専業主夫である場合や、すでに育児休業中である場合でも、本人が育児休業を取得することは可能です。さらに、通常の育児休業は、後述する産後パパ育休とは別に取得することができます。

ここで重要なのは、「有期雇用だから無理」と即断しないことです。現在の制度では、有期雇用労働者も一律に除外されているわけではありません。むしろ、実務では契約社員、嘱託、非常勤などの名称だけで誤って対象外扱いしてしまう例がありますが、法的には名称ではなく、更新の見込みなどを踏まえた要件で判断されます。厚生労働省も、「期間を定めて雇用される労働者」と「有期雇用労働者」は同じ意味であり、法が示す要件を満たせば育児休業や産後パパ育休の対象になると整理しています。

もっとも、すべての労働者が無条件に対象になるわけではありません。事業主は、労使協定がある場合に限り、一定の労働者を育児休業の対象から除外できます。ただし、その範囲は無制限ではなく、厚生労働省の現行解説では、除外できるのは、申出の日から1年以内(1歳6か月まで・2歳までの育児休業では6か月以内)に雇用関係が終了することが明らかな労働者と、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者です。逆にいえば、これを超えて広く除外することはできず、たとえば「男性は除外する」といった運用は許されません。

次に、どこまで取れるかです。通常の育児休業は、原則として、子が出生した日から1歳に達する日までの間で、労働者が申し出た期間について取得できます。そして、保育所に入れないなど、1歳を超えても休業が特に必要と認められる場合には、一定の要件のもとで1歳6か月まで、さらに再延長で2歳まで取得することができます。1歳6か月までの延長には、子が1歳に達する日に本人または配偶者が育児休業をしていること、保育所に入所できない等の事情があること、1歳6か月までの育児休業をまだしていないことなどが必要とされ、2歳までの再延長もこれに対応した要件で構成されています。

この点でも誤解が多いのですが、育児休業は「一度しか取れない」わけではありません。現行制度では、1歳までの育児休業は原則2回まで、さらに1歳6か月までの育児休業は1回、2歳までの育児休業も1回という整理です。両親が交替して取得することもでき、一定の場合には重複して取得することも可能です。したがって、夫婦の勤務先や保育園の事情に応じて、片方が先に取り、途中で交替するという設計もあり得ます。

申出実務も重要です。育児休業は、当然に発生するものではなく、労働者の事業主に対する申出を要件としています。申出は、原則として書面で行い、事業主が認める場合にはFAXや電子メール等でも可能です。申出書には、申出日、労働者の氏名、子の氏名や生年月日、続柄、休業の開始日と終了日など、一定の事項を記載する必要があります。事業主は、申出があったときは、育児休業開始予定日や終了予定日などを速やかに通知しなければなりません。

申出期限については、子が1歳に達するまでの育児休業は、原則として開始希望日の1か月前までです。これより遅れると、事業主は一定の範囲で開始日を指定できます。もっとも、出産予定日より早く子が生まれた場合や、配偶者の死亡、配偶者が養育困難になった場合、保育所等に入れない場合などの特別の事情があるときは、開始希望日の1週間前までの申出で足りる扱いがあります。1歳以降の延長部分については、申出の時期によって2週間前または1か月前が基準になります。

もう一つ、通常の育児休業と区別して押さえておきたいのが、産後パパ育休(出生時育児休業)です。これは、原則として出生後8週間以内の子を養育する、産後休業をしていない労働者が対象で、日々雇い入れられる者は除かれます。有期雇用労働者については、申出時点で、子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが要件です。産後パパ育休は、1人の子につき28日以内、2回まで分割可能ですが、2回に分ける場合は、原則としてまとめて申し出る必要があります。

産後パパ育休の申出期限は、通常の育児休業より短く、原則として開始希望日の2週間前までです。一定の雇用環境整備などを内容とする労使協定がある場合には、2週間超1か月以内で申出期限を定めることもできます。ここは企業側の就業規則や労使協定の整備状況によって扱いが変わり得るため、実務では「育休のつもりで1か月前ルールだと思っていた」「産後パパ育休なのに直前申出で足りると思っていた」という混線が起こりやすい場面です。通常の育児休業と産後パパ育休は、対象期間も申出期限も異なる制度として整理する必要があります。

企業側の実務としては、単に申出書を受け取るだけでは足りません。就業規則や社内様式を整え、誰が窓口になるのかを明確にし、妊娠・出産等の申出があった場面で制度の案内ができるようにしておく必要があります。厚生労働省は、育児休業制度等に関する個別周知・意向確認書の記載例や規則の規定例も公開しており、制度を社内で回すための書式整備まで想定しています。申出実務で揉める会社は、法律知識が足りないというより、制度運用の入口設計が曖昧なことが少なくありません。

結局のところ、育児休業の実務では、条文や制度名を知っているだけでは足りず、誰が対象か、いつまでに、どの制度を、どの方式で申し出るのかを切り分けることが重要です。労働者側としては、対象外だと言われても本当にそうかを確認する必要がありますし、企業側としては、誤った対象外処理や申出対応が紛争の火種になります。とくに、有期雇用労働者、産後パパ育休との区別、1歳以降の延長要件あたりは、現場で誤解が生じやすい論点です。

まとめ

第2回では、育児休業について、
① 誰が対象か
② どこまで取れるか
③ どう申し出るか
を整理しました。

要点を一言でいえば、
育児休業は、正社員だけの制度ではなく、要件を満たせば有期雇用労働者も対象になり、通常の育児休業と産後パパ育休を区別しつつ、期限と方式に沿って申し出ることが重要
ということです。

次回予告

第3回 2025年改正の重要ポイント①|子の看護等休暇・残業免除・テレワーク

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