第43講 育児・介護と仕事の両立|休業・時短・不利益取扱いの基本

第43講 育児・介護と仕事の両立|休業・時短・不利益取扱いの基本

育児や介護と仕事の両立というと、まず「休めるかどうか」に目が向きますが、実際の制度はそれだけではありません。育児・介護休業法は、育児休業や介護休業のようなまとまった休みだけでなく、子の看護等休暇、介護休暇、短時間勤務、残業免除、時間外労働の制限、深夜業の制限、さらに近年は柔軟な働き方の仕組みまで含めて、仕事を辞めずに続けるための制度を用意しています。厚生労働省も、令和6年改正法の柱を、育児期の柔軟な働き方の拡充と、介護離職防止のための両立支援制度の強化だと整理しています。

まず育児については、中心になるのが育児休業です。厚生労働省の育児休業制度特設サイトによれば、育児休業は原則として1歳未満の子のための休業で、両親がともに育休を取る場合にはパパ・ママ育休プラスにより子が1歳2か月に達するまで取得可能な場合があり、保育所に入れないなどの特別の事情があるときは最大2歳まで延長され得ます。また、現在は男女とも原則2回に分割して取得できます。したがって、育児と仕事の両立は「産後に少し休む」だけの制度ではなく、子の年齢や家庭事情に応じて一定期間就業を離れる仕組みから始まっています。

ただ、現実の両立では、まとまった休業よりも「働きながら調整できるか」の方が重要なことも多いです。そこで法律は、3歳未満の子を養育する労働者について、原則6時間勤務を含む短時間勤務制度を講じることを事業主に求めています。さらに2025年4月からは、所定外労働の制限、いわゆる残業免除の対象が3歳未満から小学校就学前まで拡大され、短時間勤務の代替措置にテレワークが追加され、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選べるようにすることも努力義務になりました。つまり、今の法制度は「育休を取るか取らないか」ではなく、「復帰後にどう働き続けるか」まで視野に入っています。

さらに2025年10月からは、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者について、柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されました。事業主は、始業時刻の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇、短時間勤務制度の中から2つ以上を選んで講じる必要があり、労働者はその中から1つを選んで利用できます。加えて、子が3歳になる前の一定時期には、会社が選んだ措置の内容や申出先、残業免除・時間外労働制限・深夜業制限の制度について個別に周知し、利用意向を確認する義務も設けられました。ここまで来ると、育児と仕事の両立支援は「善意の配慮」ではなく、かなり具体的な制度設計の問題になっています。

介護についても、考え方は同じです。介護は育児と違っていつ始まるか読みにくく、かつ長期化しやすいので、法律は一気に辞めるのではなく、まず介護休業・介護休暇・勤務制限で持ちこたえる設計をとっています。厚生労働省の介護休業制度特設サイトによれば、介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。また、介護休暇は対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得でき、1日又は時間単位での取得も可能です。したがって、介護は「長期休業だけ」の制度ではなく、短い単位の休みと組み合わせて日常的な介護ニーズに対応する仕組みになっています。

2025年4月改正では、介護離職防止のための会社側の義務も強化されました。厚生労働省の改正ポイント資料では、事業主は介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるよう、研修、相談窓口の整備、利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知のいずれかを講じる必要があり、労働者が家族の介護が必要な状況に至ったことを申し出たときは、制度の個別周知と利用意向の確認も必要とされています。つまり、介護の場面でも、会社は「困ったら言ってください」と抽象的に言うだけでは足りず、制度を使えるような環境整備まで求められています。

この講で特に重要なのが、これらの制度の利用を理由に不利益に扱ってはいけないという点です。厚生労働省の「不利益取扱いの禁止」資料によれば、育児休業、産後パパ育休、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務措置等、時間外労働制限、深夜業制限の申出や取得をしたことなどを理由に、解雇その他の不利益取扱いをしてはならず、2025年4月からは介護が必要な状況に至ったことの申出、2025年10月からは柔軟な働き方措置の申出や仕事と育児の両立に関する意向の内容も保護対象に加わっています。これは、制度はあっても使ったら不利になる、という“名ばかり両立支援”を防ぐための核心部分です。

しかも、不利益取扱いの中身はかなり広いです。厚生労働省は、解雇や雇止めだけでなく、退職強要、非正規化の強要、自宅待機命令、降格、減給、賞与での不利益算定、昇進・昇格の人事考課での不利益評価、不利益な配置変更、就業環境を害することなどを例示しています。したがって、育休や介護休業を取った後に「評価が落ちた」「遠い部署に飛ばされた」「賞与が不自然に減った」「昇進対象から外された」といった場面は、単なる人事裁量ではなく、法律上の不利益取扱いとして正面から争点になり得ます。

労働者側の実務としては、育児・介護と仕事の両立の場面で困ったら、まず制度名を正確に把握することが大切です。まとまって休みたいのか、短時間勤務にしたいのか、残業を免除してほしいのか、介護休暇を時間単位で使いたいのかによって、使う制度が違います。そのうえで、いつ申出をしたか、会社がどう答えたか、復帰後や申出後に配置・評価・賃金でどんな変化があったかを記録しておくべきです。両立支援の事件は、制度を使えるかどうかだけでなく、使ったこと又は使おうとしたことを契機に不利益が生じていないかで勝負が決まることが多いからです。

要するに、第43講で押さえるべきことはこうです。育児・介護と仕事の両立は、休業だけの話ではなく、休暇、時短、残業免除、深夜業制限、柔軟な働き方措置まで含めた総合的な制度で支える分野である。そして、会社は制度を用意するだけでなく、個別周知や意向確認、雇用環境整備を行い、申出や利用を理由に不利益扱いしてはならない。 だから、この分野の基本は「制度があるか」だけではなく、「現場で本当に使えるか」「使った後に報復されていないか」を見ることです。

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