第48講 相続で弁護士に相談するべき場面|もめる前ともめた後の違い

第48講

相続で弁護士に相談するべき場面|もめる前ともめた後の違い

相続で弁護士に相談する場面は、「親族同士でもう完全にもめてから」に限りません。日本弁護士連合会も、遺産分割に関わる様々なトラブルだけでなく、それを未然に防ぐための遺言についても相談対象だと案内していますし、家庭裁判所も、被相続人の死亡によって生じる問題の中には、遺産分割手続では解決できない問題が少なくないと説明しています。つまり、弁護士相談は、紛争の後始末だけでなく、「そもそもこの問題はどの手続で処理する話なのか」を早めに見極めるためにも意味があります。

もめる前に相談した方がよいのは、まず家族関係が複雑な相続です。前婚の子がいる、会ったことのない親族が関わりそうだ、内縁関係や養子縁組の有無が気になる、といった案件では、誰が当事者なのかの整理だけで手続全体が変わります。日弁連の相談例にも、「祖父が亡くなり、会ったこともない親族が遺産の分割を要求してきた」という類型が挙げられており、こうした案件は、感情論より先に、相続人の確定や手続の見取り図を作る必要があります。

次に、遺言がある、又はこれから遺言を作りたい場面でも、早めの相談に意味があります。日弁連は遺言・相続を典型的な法律相談分野として案内しており、法務省の自筆証書遺言書保管制度の案内でも、不明点があれば弁護士等の法律専門家に相談するよう促しています。遺言は、書いたこと自体より、方式、内容の明確さ、遺留分との関係、執行のしやすさまで含めて設計しないと、かえって将来の紛争原因になります。

さらに、不動産が中心の相続、事業承継、自社株、使途不明金、生前贈与や介護の偏りがある案件も、早めの相談向きです。家庭裁判所は、遺産分割手続では解決できない問題が少なくないと明言しており、遺産分割調停は、あくまで相続人間で遺産をどう分けるかを話し合う手続として組まれています。したがって、評価が難しい不動産、会社関係、使い込みや別訴を要し得る論点が見えているなら、「まず遺産分割調停に行けば全部片づく」と考えるより、どこまでを相続手続で処理し、どこからを別の請求として立てるかを先に整理した方が安全です。

一方、すでにもめた後は、弁護士相談の意味がさらに大きくなります。家庭裁判所の遺産分割調停は、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料提出や鑑定も行いながら合意を目指す手続であり、まとまらなければ自動的に審判へ移ります。ここでは、単に「納得できない」と言うだけでは足りず、相続人の範囲、遺産の範囲、評価、特別受益、寄与分などを資料で組み立てなければなりません。相手方から書面が届いた、家庭裁判所の通知が来た、遺産分割協議書への署名を求められた、という段階なら、もう「様子を見る」より相談した方がよい局面です。

要するに、相続で弁護士に相談すべき場面は二つあります。ひとつは、争点が増えそうな形が見えたとき。もうひとつは、手続が動き出したときです。前者では、もめる前に整理して傷を浅くできます。後者では、遅れた分だけ資料・主張・期限管理での立て直しが必要になります。相続は「親族の話だから最後は話せば分かる」と思われがちですが、裁判所と弁護士会の案内を並べてみると、実際には、遺言・遺産分割・周辺紛争を含む典型的な法律問題として扱われています。だからこそ、相続では「完全にこじれてから」ではなく、「この形は法的整理が要る」と見えた時点で相談することに意味があります。

第49講では、遺言を書いておくべき人は誰か|“争族”を防ぐための事前対策を扱います。ここまで相続後の整理を見てきましたが、結局いちばん効くのは、生前の設計です。

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