第13講 むち打ちで後遺障害は認定されるのか|頚椎捻挫で争いになりやすい点
第13講 むち打ちで後遺障害は認定されるのか|頚椎捻挫で争いになりやすい点

交通事故の相談で最も多い類型の一つが、むち打ち、すなわち頚椎捻挫や外傷性頚部症候群です。そして、最も多いがゆえに、最も誤解も多い分野でもあります。痛みやしびれが現実に残っていても、当然に後遺障害が認定されるわけではありません。他方で、画像に大きな異常がないからといって、必ず非該当になるわけでもありません。実務では、このあいだの微妙な線引きが問題になります。
むち打ち事案で中心になるのは、12級13号と14級9号です。前者は他覚所見のある神経症状、後者は局部に神経症状を残すものと整理されることが多く、同じ「首の痛み・しびれ」でも、どの程度客観的な裏づけがあるかで評価が分かれます。むち打ちで最も多いのは14級9号をめぐる争いですが、症状、通院経過、検査所見、事故態様の整合性が弱いと非該当になることも少なくありません。
ここで大切なのは、むち打ち事案では「痛いと言っている」だけでは足りないということです。もちろん、自覚症状は出発点として重要です。しかし認定実務では、事故直後から症状が継続しているか、通院が中断なく続いているか、診療録に症状がきちんと記載されているか、しびれや放散痛などの神経症状が一貫しているか、ジャクソンテストやスパーリングテストなど神経学的所見に補強材料があるか、といった点が見られます。
加えて、事故の態様も無視できません。衝突の程度が軽微だから直ちに否定されるわけではありませんが、事故の外力と症状の強さがあまりに乖離して見えると、慎重に見られやすくなります。また、事故後かなりたってから症状が強く主張され始めたケースや、通院間隔が不自然に空いているケースでは、症状の一貫性に疑問を持たれやすいのが実務です。
一方で、むち打ちは画像に明確な異常が出にくい類型でもあります。そのため、画像所見が弱いこと自体で直ちに終わりではありません。問題は、画像が弱い中で、診療経過や症状の一貫性、生活や仕事への支障をどこまで丁寧に積み上げられるかです。実務上、むち打ちの後遺障害は「画像一発勝負」ではなく、「全体の整合性」で評価される面が強いといえます。
むち打ち事案で後遺障害が認定されるかどうかは、症状の重さそのものだけで決まるわけではありません。症状がどのように発生し、継続し、資料として残されているかが問われます。よくある事故だから簡単、ということではまったくなく、むしろ件数が多いからこそ、認定側は細かく見ています。だからこそ、むち打ち事案ほど、早い段階から資料の整え方が重要になります。