第12講 弁護士に依頼する意味はどこにあるか|認定と賠償の両面から考える

第12講 弁護士に依頼する意味はどこにあるか|認定と賠償の両面から考える

交通事故で弁護士に依頼する意味は、単に保険会社との交渉を代わりにしてもらうことではありません。特に後遺障害が問題となる事案では、認定と賠償は別々の問題ではなく、強く結びついています。どの等級が認定されるかによって、慰謝料、逸失利益、将来の交渉方針が大きく変わる以上、入口である等級認定の段階から見通しを持って対応することに実益があります。

まず、等級認定の局面では、どの類型で勝負すべきか、何が足りないのか、どの資料を追加すべきかを整理する必要があります。ここでは、単に病院に通っていれば足りるわけではなく、診断書の記載、検査の内容、通院経過、症状の一貫性、仕事や生活への支障の出方などを、認定実務に即して見直す必要があります。被害者本人にとっては当然と思える事情でも、資料上うまく表れていなければ、認定では十分に評価されません。弁護士が入る意味の一つは、ここを「法律実務と認定実務の言葉」に置き換える点にあります。

次に、等級が認定されたあとも問題は終わりません。むしろ、そこからが示談交渉の本番です。保険会社提示額は、必ずしも裁判基準に沿ったものではありませんし、逸失利益の労働能力喪失期間や喪失率、休業損害の評価、過失相殺の扱い、既払金の整理など、金額に直結する論点は多数あります。後遺障害が認定されても、それを賠償額として適切に反映させるには、別の交渉技術が要ります。

また、後遺障害事案では、医学的な限界と法的な評価を切り分ける視点も重要です。医師は治療や診断の専門家ですが、どの資料がどの賠償項目にどう結びつくかは、必ずしも医療の守備範囲ではありません。たとえば、「症状は残っている」という事実と、「賠償実務上どこまで認めさせられるか」は一致しないことがあります。その間を埋めるのが、法的主張と資料整理です。

さらに、依頼の実益は金額だけに限りません。被害者本人が、治療を続けながら、書類を集め、保険会社とやり取りし、認定結果を分析し、必要なら異議申立てまで進めるのは大きな負担です。とりわけ痛みやしびれ、高次脳機能障害など、見えにくい症状を抱える方にとって、その作業自体が重荷になります。適切な専門家に依頼することは、手続的負担を減らし、争点を見失わないという意味でも価値があります。

もっとも、弁護士に依頼すれば必ず等級が上がる、必ず賠償額が大幅に増える、という単純な話ではありません。案件によっては、資料上の限界があり、見通しが厳しいこともあります。重要なのは、楽観論ではなく、どこが争えてどこが難しいかを見極めたうえで、認定と賠償を一体として組み立てることです。弁護士に依頼する意味は、まさにその設計にあります。

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