第11講 異議申立てとは何か|一度ダメでも終わりではない理由

第11講 異議申立てとは何か|一度ダメでも終わりではない理由

後遺障害等級認定で「非該当」あるいは想定より低い等級となったとしても、それで直ちに終わりになるわけではありません。ここで問題になるのが異議申立てです。もっとも、異議申立ては単なる「もう一回見てください」というお願いではありません。実務上の核心は、初回認定で足りなかった資料、弱かった論点、うまく伝わっていなかった事情を補強し、判断構造そのものに働きかけることにあります。

異議申立てで大切なのは、まず初回認定がなぜ不利に出たのかを冷静に分析することです。よくあるのは、症状の一貫性が十分に見えない、通院経過が薄い、画像所見や検査所見との結びつきが弱い、事故態様と症状発生の流れがうまく整理されていない、主治医の意見書が抽象的すぎる、といった場面です。つまり、異議申立てとは「結論への不満」を述べる手続ではなく、「なぜその結論になったのか」を分解して、その弱点を埋める作業です。

実際、異議申立てで結果が変わるかどうかは、新しい材料をどれだけ出せるかに大きく左右されます。診断書や後遺障害診断書の補充、画像の再読影、神経学的所見の追加、可動域測定の精緻化、高次脳機能障害であれば神経心理学的検査や家族の観察記録の補強など、類型ごとに必要な資料は異なります。初回と同じ資料をそのまま再提出しても、結論は変わりにくいのが通常です。

また、異議申立てでは「どの資料を出すか」だけでなく、「どう整理して出すか」も重要です。資料が多ければよいわけではありません。むしろ、事故前後の経過、症状の発生と継続、検査結果、日常生活や就労への支障が、時系列で矛盾なく見えるように組み立てる必要があります。認定実務は、被害者本人の苦しさを直接知る場ではなく、書面と資料から判断する場です。したがって、伝わる形に翻訳する作業が不可欠です。

異議申立てで注意したいのは、初回申請の弱点を直視しないまま「とにかく納得できない」と進めてしまうことです。感情としてはもっともですが、実務ではそれだけでは足りません。非該当や低位等級には、必ず何らかの理由があります。その理由に正面から向き合い、補強可能な部分と、構造的に厳しい部分を見極める必要があります。

一度目でうまくいかなかった案件でも、補強の方向が合っていれば評価が変わることはあります。他方で、補強のしようが乏しい案件もあります。異議申立てとは、希望だけで進める手続ではなく、資料の再設計によって再評価を促す手続です。だからこそ、出し直しではなく“補強”が重要なのです。

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