第13回 内定取消・試用期間解雇はどこまで許されるのか

第13回 内定取消・試用期間解雇はどこまで許されるのか

会社から採用を告げられたのに、入社前になって「やはり来てもらえない」と言われる。あるいは、入社したものの試用期間中に「本採用はしない」と言われる。こうした場面では、「まだ本採用ではないのだから会社が自由に切れるのではないか」と思われがちです。ですが、法的にはそう単純ではありません。採用内定は、場合によってはすでに労働契約が成立していると扱われ、試用期間中の解雇や本採用拒否も、通常の解雇よりやや広く認められるとはいえ、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

1 採用内定は「まだ社員ではないから無保護」ではない

厚生労働省の整理では、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合、採用内定取消しは解雇に当たり、労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されます。さらに、厚労省の裁判例整理でも、特段の別意思表示が予定されていない場合、募集への応募は労働契約の申込みであり、採用内定通知はその承諾として、就労始期を後ろに置いた労働契約が成立するとされています。つまり、「入社日がまだ来ていない」というだけで、会社が自由に内定を取り消せるわけではありません。

2 内定取消しが許されるのはかなり限られた場合

採用内定取消しについて、厚生労働省の資料と裁判例整理は共通して、取消事由は、内定当時には知ることができず、また知ることが期待できない事実であって、それを理由に取り消すことが解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的であり、社会通念上相当といえるものに限られるとしています。したがって、単に気が変わった、景気が悪くなった、配属の都合が変わった、といった程度で直ちに許されるわけではありません。内定者は他社への就職機会を失っていることが多く、裁判例でも、その不利益の大きさが重く見られています。

3 「内々定」は少し扱いが違う

もっとも、内々定の段階では、常に労働契約が成立しているとは限りません。厚労省の裁判例整理でも、正式な内定通知前の段階では、労働契約成立までは認められないが、労働契約が確実に締結されるだろうという期待が法的保護に値する程度に高まっていたとして、信義則違反や期待権侵害の問題として損害賠償や慰謝料が論点になった事例が紹介されています。つまり、正式内定か内々定かで法的構成は変わり得ますが、どちらにしても会社が何の責任も負わないとは限りません。

4 試用期間は「お試し」でも、解雇自由期間ではない

試用期間について、厚生労働省の裁判例整理は、適性を評価・判断するために設けられた期間であるときは、特段の事情がない限り、解約権が留保された試用期間と解するとしています。そのうえで、試用期間中の解約権の行使は通常の解雇より広い範囲で認められるものの、試用期間の趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合にのみ許されると整理しています。さらに、適性判断に必要な合理的期間を超える長期の試用期間は、公序良俗に反し、その限りで無効になり得るとも示されています。

5 試用期間中の解雇・本採用拒否は、何でも許されるわけではない

厚生労働省のあっせん事例解説でも、試用期間中や試用期間終了時の本採用拒否は、試用制度の観点からみて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認される場合でなければ有効ではないと整理されています。そこで重要になるのは、採用時には分からなかった適性欠如や重大な問題が試用中に判明したか、会社が指導や改善機会をどこまで与えたか、評価が具体的で一貫していたか、という点です。実際に厚労省のあっせん事例でも、上司の指導不足が見られることなどから、解雇理由の合理性が否定される可能性があると説明されたケースが紹介されています。

6 勤務不良と言われても、直ちに会社が勝つわけではない

会社側は、試用期間中の解雇や本採用拒否について、「勤務態度が悪い」「適性がない」「協調性がない」といった抽象的な理由を挙げがちです。しかし、厚労省の裁判例整理とあっせん事例解説を見ると、有効性は、具体的にどのような問題があり、それが就業規則上の解雇事由や試用制度の趣旨に照らしてどこまで重大か、指導や改善機会を経てもなお雇用継続が適当でないといえるかで判断されています。単なる好みや印象だけでは足りませんし、一度の軽微なミスだけで直ちに切ることは不安定になりやすいです。これは上記の公的整理から導かれる実務上の要点です。

7 手続にも注意が必要

採用内定取消しや試用期間中の解雇であっても、労働契約が成立している以上、解雇手続の問題は切り離せません。厚労省資料では、採用内定取消しに労基法20条・22条が適用されるとされており、やむを得ず取り消すなら解雇予告などの手続を適正に行い、理由証明書の請求があれば遅滞なく交付しなければなりません。試用期間中の解雇についても、雇入れ後14日を超えていれば、原則として30日前予告または解雇予告手当が必要であり、14日以内だけが例外です。

8 会社から言われたとき、まず何を確認するか

この場面で重要なのは、内定通知書、採用条件通知書、誓約書、メール、試用期間条項のある雇用契約書、就業規則、評価票、指導記録、面談記録などを確保することです。見たいのは、正式内定が成立していたのか、取消事由や試用期間条項がどう書かれていたのか、実際に会社がどのような理由を述べているのか、改善機会や説明があったのか、という点です。また、解雇や取消しを告げられたなら、理由証明書の交付を求めることが有効です。厚労省も、解雇理由を確認する手段として証明書請求を案内しています。

9 相談のタイミングは早い方がよい

内定取消しは、入社日が近いほど生活上の打撃が大きくなりやすく、試用期間中の解雇も、そのまま退職書類のやり取りに流されると争点が固定されやすくなります。厚労省の裁判例整理でも、内定取消しの時期や会社の対応の誠実性、内定者の受ける不利益の大きさが重視されています。したがって、「まだ入社前だから」「まだ試用中だから」と様子を見るより、理由が曖昧な段階で早めに資料をそろえて整理した方が有利です。

まとめ

内定取消しも、試用期間中の解雇や本採用拒否も、会社が自由にできるものではありません。採用内定は、場合によってはすでに労働契約が成立しており、その取消しには解雇と同じく客観的合理性と社会的相当性が必要です。試用期間も、通常の解雇よりやや広く認められるとはいえ、適性判断の趣旨に照らして合理的な理由と相当性が必要で、長すぎる試用期間も問題になります。結局のところ、「まだ正式ではない」「まだお試しだから」という会社の言い方だけで諦めないことが重要です。

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