第12回 懲戒処分を受けたときの見方|戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇

第12回 懲戒処分を受けたときの見方|戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇

会社から懲戒処分を言い渡されると、多くの方は「就業規則に書いてあるなら従うしかない」「会社が決めた以上もう争えない」と考えがちです。ですが、懲戒処分は会社が自由に科せるものではありません。労働契約法15条は、使用者が労働者を懲戒できる場合であっても、その懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないときは、権利濫用として無効になると定めています。さらに厚生労働省の資料でも、懲戒には就業規則上の根拠、懲戒事由への該当性、そして処分の相当性や手続の適正が必要だと整理されています。

1 懲戒処分とは何か

懲戒処分とは、会社が企業秩序を維持するために、労働者の規律違反に対して科す制裁です。厚生労働省のモデル就業規則では、軽いものから順に、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇という形が例示されています。実際の会社では「戒告」「譴責」など名称が少し違うことがありますが、軽い書面注意から、賃金不利益、就労停止、最終的な懲戒解雇まで、重さには段階があります。

2 まず大前提として、就業規則に根拠が必要

懲戒で最初に見るべきなのは、「その会社が、そもそもその処分をできることになっていたか」です。厚生労働省のあっせん事例解説では、懲戒権の前提として、就業規則に具体的な懲戒事由と懲戒罰を定めておく必要があるとされ、モデル就業規則の解説でも、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないと明記されています。労働基準法89条も、表彰や制裁について定めるなら、その種類と程度を就業規則に記載する前提をとっています。

つまり、会社が後から「今回はこういう理由で懲戒だ」と言っても、就業規則上その類型が用意されていなければ、その時点でかなり不安定です。就業規則に抽象的な文言があるだけで足りるのか、今回の事実がそこに本当に当てはまるのか、という点まで見なければなりません。厚生労働省の資料でも、就業規則上の懲戒規定に、当該労働者の行為が該当するかが次の検討対象になると整理されています。

3 「処分理由があるか」と「処分が重すぎないか」は別問題

仮に就業規則上の懲戒事由に当たるとしても、それだけで会社が常に勝つわけではありません。厚生労働省の解説は、懲戒の有効性判断について、まず当該行為に客観的理由があるかを見たうえで、さらにその処分が社会通念上相当かを別に検討するとしています。相当性の判断では、行為の性質・態様、会社への影響、過去の同種事例との均衡、本人の勤務状況や反省の有無などが問題になります。

このため、軽いミスや一回限りのトラブルに対して、いきなり重い処分を出している場合は要注意です。逆に、無断欠勤の反復、重大な経歴詐称、故意または重大な過失による重大損害、繰り返しの指示命令違反などでは、会社側の処分が重くなりやすい構造があります。厚生労働省のモデル就業規則も、無断欠勤の継続、再三の注意に従わない勤務態度、重大な損害発生などを懲戒解雇事由の例として掲げています。

4 戒告・けん責のような軽い処分でも、無制限ではない

戒告やけん責は、始末書の提出などを通じて将来を戒める比較的軽い処分です。処分としては軽い部類ですが、それでも就業規則上の根拠が必要で、事実関係に誤りがあったり、実質的には報復や見せしめのために使われていたりすれば争点になります。厚生労働省の整理でも、懲戒処分全般について、根拠・客観的理由・相当性・手続の適正が必要であり、軽い処分だから自由という整理にはなっていません。

実務上は、「軽い処分だから争っても意味がない」と思われがちですが、その後により重い処分へつながる布石になることがあります。モデル就業規則でも、数回にわたり懲戒を受けても改善が見込めない場合を重い処分の方向に結び付けています。したがって、軽い懲戒でも、納得できないならその時点で理由と証拠を確認しておく意味があります。

5 減給には法律上の上限がある

懲戒処分の中で特に誤解が多いのが減給です。労働基準法91条は、就業規則で減給の制裁を定める場合、1回の額が平均賃金1日分の半額を超えてはならず、総額も1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないと定めています。厚生労働省のモデル就業規則も、この上限をそのまま条文例に入れています。

したがって、会社が「懲戒だから給料を大きく減らす」「賞与ごと大幅に削る」といった処理をしていても、それが本当に適法かは別問題です。なお、遅刻や早退の時間そのものに対応する不払いは、もともとその時間の賃金債権が発生しないという整理になり得ますが、その時間分を超える減額は制裁として労基法91条の制限を受けます。これは厚生労働省のモデル就業規則解説でも明示されています。

6 出勤停止は、処分としてかなり重い

出勤停止は、一定期間労務の提供をさせず、その間の賃金も支給しない処分です。厚生労働省のモデル就業規則では、出勤停止は日数の上限を設けたうえで、その間の賃金不支給を定める例が示されています。軽い注意や始末書より一段重く、労働者にとっては収入減と職場からの排除が同時に生じるため、相当性がより厳しく問われやすい処分です。

この類型では、事実関係が本当に固まっているか、本人に弁明の機会があったか、処分期間が長すぎないかが重要です。厚生労働省のあっせん事例解説は、相当性判断の中に、罪と罰の均衡、従業員間の平等取扱い、就業規則上の手続遵守、労働者への弁明機会の保障を含めています。つまり、会社が一方的に「とりあえず自宅待機」「出勤停止」としても、その進め方次第で処分全体が不安定になります。

7 懲戒解雇は最も厳しく見られる

懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重いものです。厚生労働省のあっせん事例解説では、懲戒解雇には労働契約法15条の懲戒規制だけでなく、同16条の解雇規制も重なると整理されています。つまり、単なる懲戒一般よりさらに厳しく、就業規則上の根拠、客観的理由、社会通念上の相当性のすべてが強く求められる、ということです。

しかも、懲戒解雇を即時に行い、30日分以上の解雇予告手当を支払わないのであれば、所轄労働基準監督署長の認定が必要です。厚生労働省のモデル就業規則も、その認定を受けたときに限って予告手当を支給しない例を示しており、認定を受けないなら予告手当が必要だと解説しています。したがって、「懲戒解雇だから即日無給で終わり」という会社の扱いが、そのまま適法とは限りません。

8 手続が雑だと、処分はかなり不安定になる

懲戒処分では、結論だけでなく手続も重要です。厚生労働省の解説は、適正手続の観点として、就業規則上の手続を守っているか、労働者に弁明の機会が保障されているかを明示しています。また、同種事案との均衡や平等取扱いも相当性判断に入るとしています。

そのため、本人から事情を聴かずに処分を決めた、証拠を見せないまま始末書だけ求めた、他の社員は軽い処分なのに特定の人だけ極端に重い、過去の注意や指導の経過がないのにいきなり重い処分に飛んだ、といった場合は、かなり争点になりやすいです。これは法律に一律の懲戒手続条文があるというより、厚生労働省が示す相当性・適正手続の枠組みから導かれる実務上の重要点です。

9 会社が立証すべきという視点を持つ

懲戒処分を受けたとき、労働者側は「自分が無実だと全部証明しないといけない」と思い込みがちです。しかし、厚生労働省のあっせん事例解説は、懲戒の有効性を支える根拠事実についての立証責任は使用者にあると整理しています。もちろん労働者側も反証資料を出す方が有利ですが、基本的には、会社が何を理由に、どの規程に基づき、どんな証拠で、その重い処分を正当化するのかが問われます。

だからこそ、処分通知書、始末書提出命令、調査メモ、面談記録、メール、チャット、録音、就業規則、過去の注意書などを集めることが大切です。会社の説明が途中で変わったり、後から理由が付け足されたりすることもあるため、「いつ、何を、どう言われたか」を時系列で押さえることが、見通しをかなり左右します。これは上記の立証構造から見ても自然な実務対応です。

まとめ

懲戒処分を受けたときに見るべきなのは、単に「何をしたとされているか」だけではありません。まず就業規則に根拠があるか、その事実が本当に懲戒事由に当たるか、処分が重すぎないか、手続が守られているか、本人に弁明の機会があったか、同種事案との均衡が取れているかを順に見る必要があります。減給には法律上の上限があり、懲戒解雇は特に厳しく審査され、即時解雇なら解雇予告手当や監督署長認定の問題も出てきます。就業規則に書いてあるから終わり、ではありません。

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