第20講 欠勤・遅刻・早退で賃金はどうなるか|ノーワーク・ノーペイの基本

第20講 欠勤・遅刻・早退で賃金はどうなるか|ノーワーク・ノーペイの基本

欠勤・遅刻・早退の場面で、いちばん大事なのは、**「働かなかった分の不払い」と、「制裁としての減給」**を分けて考えることです。厚生労働省の教材でも、遅刻・欠勤・早退についてはノーワーク・ノーペイの考え方が前提にありつつ、ペナルティとして減給する場合には別に上限がある、という整理が示されています。

1 出発点は「働かなかった分は払われないことがある」

賃金は労働の対価なので、欠勤・遅刻・早退で実際に働かなかった時間や日について、その分の賃金が支払われないこと自体は、直ちに違法とは限りません。これが、いわゆるノーワーク・ノーペイの基本発想です。厚生労働省の教材も、この考え方を前提に説明しています。

ただし、ここで終わりではありません。会社は賃金を好きなように差し引けるわけではなく、賃金支払には労基法24条のルールがあり、法定控除以外の天引きには原則として労使協定が必要です。厚生労働省も、賃金は全額払いが原則で、所得税や社会保険料など法令で定められたもの以外の控除は、労使協定がある場合に限られると説明しています。

2 まず確認すべきは、「不就労分の控除」なのか「懲戒減給」なのか

欠勤・遅刻・早退で給料が減っていたとき、最初に見るべきなのは、それが働かなかった分の控除なのか、それとも懲戒としての減給なのかです。前者はノーワーク・ノーペイの問題で、後者は労基法91条の「減給の制裁」の問題です。両者は別物です。

この区別が大事なのは、後者には厳しい上限があるからです。厚生労働省は、制裁としての減給について、1回の額は平均賃金1日分の半額まで、かつ総額は1賃金支払期における賃金総額の10分の1までと説明しています。つまり、働かなかった分の不払いとは別に、さらに罰として大きく引くことは簡単にはできません。

3 「遅刻1回で大きく引かれた」は要注意

たとえば、30分の遅刻なのに半日分や1日分に近い控除がされている、欠勤1回に加えて別途大きな減額がされている、という場合は要注意です。会社が「遅刻だから当然」と言っていても、それが実際には制裁減給なら、労基法91条の上限にかかります。

逆に、会社が「これは単に働かなかった時間分を引いただけ」と言うなら、次はその計算根拠を見る必要があります。何時間分を、どの単価で、どう計算したのかが賃金規程や給与制度と合っているかを確認しないといけません。賃金は全額払いが原則で、勝手な名目での控除は許されないからです。

4 会社都合で休んだのなら、話は逆になる

ここは非常に重要です。休んだといっても、それが本人都合なのか、会社都合なのかで結論が変わります。厚生労働省は、使用者の責任で労働者を休業させた場合には、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないと説明しています。

したがって、「仕事がないから帰っていい」「今日はシフトを減らす」「店を開けないから休み」といった会社側事情で働けなかったのに、単純に欠勤扱いでゼロにされるのはおかしいことがあります。ここではノーワーク・ノーペイではなく、休業手当の問題になります。

5 欠勤控除と、皆勤手当・賞与査定は別に見た方がよい

欠勤・遅刻・早退があると、月例賃金の控除だけでなく、皆勤手当が外れたり、賞与査定が下がったりすることがあります。この場面では、その月の不就労分を差し引く話と、別制度の支給要件や査定の話を分けて見た方が安全です。厚生労働省のQ&Aでも、減給の制裁に当たるものと、勤務評価や職務変更に伴う減額は区別して整理されています。

つまり、「皆勤手当が出ない」ことと、「月給本体から不就労分以上に引かれる」ことは同じではありません。前者は手当要件や評価制度の問題として見る場面があり、後者はノーワーク・ノーペイや制裁減給の限界の問題として見ることになります。

6 会社は、何でも自由に天引きできるわけではない

欠勤・遅刻・早退の場面で、会社が雑に処理しがちなのが控除です。厚生労働省は、賃金の全額払い原則のもと、法令で認められた控除以外は、労使協定がなければ原則として認められないとしています。

そのため、「遅刻したから反省文代として引く」「欠勤したから事務手数料を引く」「制服クリーニング代を当然に引く」といった処理は、かなり危ういです。欠勤・遅刻・早退に関係していても、不就労分の賃金控除なのか、制裁なのか、別名目の天引きなのかで、法的評価は変わります。

7 実務でまず見るべき資料

この場面で最初に見るべきなのは、給与明細、就業規則、賃金規程、欠勤・遅刻・早退の取扱いを定めた社内規程です。厚生労働省も、会社には給与明細書を交付する義務があるとしていますし、賃金控除や減給のルールは規程に現れることが多いです。

特に見るべきなのは、どの欄が減っているかです。基本給本体が減っているのか、欠勤控除欄があるのか、皆勤手当が消えているのか、懲戒減給のような別項目が立っているのか。この切り分けをすると、かなり見通しが立ちます。

8 「欠勤したのだから全部会社の自由」は誤り

会社側は、「働かなかったのだからどう引いてもよい」という感覚で説明することがありますが、それは雑すぎます。厚生労働省の整理から見ても、少なくとも、会社都合休業なら休業手当が必要であり、制裁減給には上限があり、任意の天引きには全額払い原則と労使協定の問題があります。

要するに、欠勤・遅刻・早退はたしかに賃金に影響しますが、それでも会社の処理には法的な線引きがあります。そこを越えているなら、単なる「給料計算」ではなく、違法な控除や違法な減給の問題になります。

9 まとめ|「働かなかった分」と「罰として引く分」を混ぜない

欠勤・遅刻・早退の基本は、まずノーワーク・ノーペイです。実際に働かなかった時間や日について、その分の賃金が払われないこと自体はありえます。けれども、それはあくまで不就労分の処理であって、そこにさらに制裁を重ねるなら、労基法91条の上限がかかります。

そして、休みが会社都合なら休業手当の問題になりますし、任意の天引きには全額払い原則の壁があります。つまり、この論点の骨格は、「働かなかった分」と「罰として引く分」を混ぜないことです。ここを分けるだけで、かなり整理しやすくなります。

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