第21講 休職を命じられたとき何が起きるか|復職・自然退職との関係

第21講 休職を命じられたとき何が起きるか|復職・自然退職との関係

「しばらく休職してください」と言われたとき、解雇なのか、単なる欠勤なのか、復帰できるのかが見えにくくなりがちです。まず押さえたいのは、休職は解雇とは違うということです。厚生労働省のモデル就業規則は、休職を、業務外の疾病など主として労働者側の事情で長期間就労を期待しにくい場合に、労働者としての身分を保有したまま、一定期間就労義務を免除する特別な扱いと説明しています。しかも厚労省は、休職の定義、休職期間、復職の扱いについては労基法に定めがないとも明示しています。つまり、休職は法律が一律に決める制度ではなく、通常は就業規則や個別の制度設計で決まります。

そのため、休職の場面では、まず就業規則を見ないと始まりません。どんな場合に休職になるのか、期間は何か月か、賃金は出るのか、復職の条件は何か、期間満了でどうなるのかが会社ごとに違うからです。厚生労働省のモデル就業規則でも、休職期間中に休職事由が消滅したときは原則として元の職務に復帰させ、元の職務への復帰が困難または不適当な場合には他の職務に就かせることがある一方、休職期間が満了してもなお治癒せず就業困難なら、満了をもって退職とする例が示されています。

1 休職は「身分を残したまま、働く義務を止める」制度である

休職は、労働契約そのものをいったん切る制度ではありません。厚生労働省のモデル就業規則が示すとおり、身分は残したまま就労義務を免除する扱いです。だから、休職に入った時点で直ちに退職したことにはなりませんし、復職という出口も予定されています。

この意味で、休職は「解雇の前段階」とは限りません。もっとも、就業規則で休職期間満了時の扱いがどう定められているかによって、後で自然退職につながることはあります。だからこそ、休職通知を受けた時点で、規程の中身と期間計算を確認することが重要です。

2 休職制度は会社に当然あるわけではない

ここは誤解が多いところです。私傷病による休職制度は、多くの企業にありますが、法律で一律に設置が義務づけられているわけではありません。厚生労働省のモデル就業規則が、休職制度の内容を就業規則で定める前提で解説していること、また「休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません」としていることからも、その性質は明らかです。

もっとも、厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、病気休職制度のある企業割合は91.9%とされており、実務上はかなり広く使われています。だから「法律で当然ある制度」ではないが、「実務ではかなり一般的な制度」と理解しておくのが正確です。

3 休職中の賃金は、会社ごとの規程によることが多い

休職中に賃金が出るかどうかも、法律が一律に満額支給を定めているわけではありません。厚生労働省のあっせん事例解説でも、休職期間中の賃金や勤続年数算入の取扱いは企業ごと・制度ごとにさまざまで、一般に本人都合や本人側事情による休職では無給または低率支給になりやすいと整理されています。

したがって、休職に入ったら、賃金・賞与・勤続年数・退職金算定・年休付与への影響を就業規則で確認する必要があります。特に無給休職では、健康保険の傷病手当金など外部制度の確認も重要になります。厚労省の職場復帰支援の手引きも、休業開始時に傷病手当金などの経済的保障について情報提供することを挙げています。

4 復職は「診断書が出たら自動で戻れる」わけではない

復職の場面でよくある誤解は、「主治医の復職可診断書が出たら、それで会社は必ず戻さなければならない」というものです。厚生労働省の職場復帰支援の手引きは、主治医の診断は日常生活レベルの回復を中心に判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないと説明しています。そのため、主治医の意見だけでなく、産業医等による精査や、職場で必要な業務遂行能力とのすり合わせが重要だとされています。

つまり、復職判断は、診断書があるかないかの一点勝負ではありません。会社側にも、労働者の状態、業務内容、就業上の配慮の要否、配置転換の可能性などを踏まえて総合判断することが求められます。厚労省の手引きも、必要な情報を収集し、さまざまな視点から評価した上で復職可否を判断し、職場復帰支援プランを作る流れを示しています。

5 復職判断では、配置転換や軽減業務の検討が問題になる

特に重要なのは、元の業務に完全には戻れなくても、別の業務や軽減業務で現実に復帰可能ではないか、という点です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、職種や業務内容を特定していない正社員については、休職前の業務を十全にはできなくても、その能力、経験、地位、会社の規模や配置実情などを考慮し、現実に配置可能な業務の有無を検討して、その業務を指示すべきとする裁判例があると案内しています。

さらに、厚労省のあっせん事例解説は、休職期間満了時に元の業務へ直ちに戻れなくても、ほどなく回復が見込まれるなら、可能な限り軽減業務に就かせるべきだとする裁判例の流れを紹介しています。つまり、復職判断は「元の仕事を100%できるか」だけで切られるわけではなく、現実的に復帰可能な仕事があるかまで見られます。

6 ただし、労働者側にも協力義務はある

ここは一方的に会社だけに厳しい話ではありません。厚生労働省のあっせん事例解説は、復職可能性の判断にあたり、労働者は診断書の提出などによって会社の判断に協力する義務があるとする裁判例も紹介しています。

したがって、復職を希望するなら、主治医の診断書、就業上の配慮事項、必要なら産業医面談への協力などをきちんと行う方が有利です。「戻りたい」とだけ言って資料を出さないままでは、会社側に「判断できない」と言われやすくなります。

7 自然退職は「就業規則に書いてあるから常に有効」ではない

休職期間満了時の「自然退職」は、会社がよく使う言葉ですが、これも自動的に安全とはいえません。確かに、厚生労働省のモデル就業規則には、休職期間満了時になお治癒せず就業困難な場合は退職とする規定例があります。つまり、制度設計としては一般的です。

しかし、厚生労働省のあっせん事例解説は、職種限定のない労働者などについて、軽減業務や配置可能業務の検討をせずに休職期間満了による退職扱いや解雇をした場合、それらが就業規則上の要件不該当や解雇権濫用として無効とされうる裁判例を紹介しています。要するに、自然退職条項があることと、その適用が有効なことは別です。

8 業務上の傷病なら、さらに保護が強い

私傷病休職と違って、業務上の傷病なら解雇規制がさらに強くなります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、業務上の傷病によって休職している場合には、原則として休業期間中およびその後30日間は解雇が禁止されると案内しています。

したがって、メンタル不調や身体疾患が業務起因である可能性がある事案では、単なる私傷病休職として片づけず、労災や労基法19条の保護も視野に入れる必要があります。ここは結論が変わりうる大きな分岐です。

9 メンタル不調の復職では、職場復帰支援の流れも重要になる

メンタルヘルス不調による休職では、厚生労働省は職場復帰支援の5ステップを示しています。具体的には、病気休業開始・休業中のケア、主治医による復職可能判断、復職可否判断と支援プラン作成、最終的な職場復帰決定、復帰後のフォローアップです。さらに、支援プランでは、復職日、業務内容や業務量の変更、段階的就業上の配慮、配置転換や勤務制度変更、フォローアップ方法などを検討すべきとされています。

この流れは法的義務の条文そのものではありませんが、会社が復職判断をどれだけ丁寧に行ったかを見るうえで、かなり有力な物差しになります。少なくとも、何の情報収集もせず、診断書1枚だけで「無理」「終了」とする運用は危ういです。

10 実務で最初に確認したいこと

休職を命じられたら、まず就業規則の休職条項を確認します。休職事由、期間、賃金、復職条件、期間満了時の扱いがどう定められているかが土台です。モデル就業規則が示すように、ここは法律の一律ルールではなく、会社規程で決まる部分が大きいからです。

そのうえで、復職段階では、診断書、主治医意見、産業医面談の有無、配置転換や軽減業務の検討状況、会社からの説明記録、休職期間満了日の計算を確認します。自然退職扱いが問題になるときは、元の仕事に戻れるかだけでなく、他に現実的に配置可能な仕事があったかも重要です。

11 まとめ|休職は中間状態であり、復職可否の判断が核心になる

休職は、労働契約を終わらせる制度ではなく、身分を残したまま就労義務を止める中間状態です。法律が全国一律に細部を決めているわけではなく、就業規則での設計が大きな意味を持ちます。モデル就業規則でも、休職期間中の復職、他職務復帰、期間満了退職という流れが示されています。

そして、実際の争点は、休職に入ったこと自体よりも、復職できる状態だったのに戻さなかったのではないか軽減業務や配置転換を検討すべきだったのではないか自然退職扱いが早すぎるのではないか、というところに集まりやすいです。休職はゴールではなく、復職可否判断が核心です。

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